謝罪会見を開いたはずが、ボロカスに叩かれてさらに評判を落とした豊田真由子氏。おじぎの角度から回答内容まで、危機管理のプロの指南に忠実にこなしたであろうことは間違いないが、なぜ結果が「惨敗」だったのだろうか?(ノンフィクションライター 窪田順生)

服装からおじぎまで
プロのアドバイスに忠実だった

豊田真由子氏から学ぶ、謝罪会見大失敗の根本的な理由危機管理のプロからしっかりと対応策を伝授されて会見に臨んだであろう豊田真由子氏。マニュアル通りにできていたにもかかわらず、なぜボロカスに叩かれ、さらに評判を落とす事態になってしまったのだろうか? 写真:日刊現代/アフロ

「ち~が~う~だ~ろ~」がチビッコたちのギャグにまでなり一躍全国区となった豊田真由子衆議院議員が催した「謝罪会見」がすこぶる評判が悪い。あそこまでボロカスに叩かれるのなら会見など開かない方がよかったのかもしれない。

 既に情報番組やらネットニュースやらでいろいろな専門家や有識者が問題点を指摘されているので、ここで改めて一つひとつ羅列するのはやめておくが、この10年あまり危機管理広報に携わってきた立場から言わせていただくと、あの会見は以下の一言に尽きる。

「テンプレ危機管理」の限界――。

「テンプレ」とはテンプレート。就職活動のエントリシートやお礼状、あるいはビジネス文書などで一度は使用したという方も多いだろう。要するに、マニュアル等で定められている「模範文」のことだ。

 世間も薄々、勘付いていると思うが、企業や政治家が不祥事を起こして、謝罪会見を開いたり、謝罪コメントを出すという時も、実はこの「テンプレ」がフル活用されている。弁護士など「危機管理コンサルタント」を名乗るプロのみなさんが、「こういう質問がきたら、こう返しておきましょう」という「模範回答文」を授けて、登壇者はそれを自分流にちょこっとカスタマイズするのだ。

 つまり、「テンプレ危機管理」とは模範的な立ち振る舞い、模範的な回答で世間に反省していると強く印象づけよう、という危機管理のスタイルである。いろいろ叩かれているが、豊田氏の会見はあらゆる面で、この「テンプレ」に準じていた。

 黒髪に黒いスーツ、8秒間も頭を深々と下げたおじぎ、司会者が「では、次の方が最後で」と案内しても「大丈夫です」と対応を続けるなど、謝罪会見の「作法」はしっかりと押さえていた。恐らく、「危機管理のプロ」の方々から綿密なトレーニングを受けてきたのだろう。