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農業開国論 山下一仁

洞爺湖サミットの共同声明は穀物高に苦しむアフリカを救えるか?

山下一仁 [キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/経済産業研究所上席研究員(非常勤)]
【第2回】 2008年7月18日
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 今回は、先の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)で表明された途上国に対する食料援助について筆者なりの考えを述べたい。

 そうした必要性を感じたのは、多くのメディアが当を得たとはいえない報道を繰り返しているためだ。それは、緊急の食料供給支援や国際的な食料備蓄体制の整備を、あたかもアフリカなど途上国に対する食料支援の目玉であるかのように取り上げていた点である。
 
 国際的な備蓄体制が食料逼迫問題解決の決め手とならないことは前回述べた。市場が過剰と逼迫を交互に繰り返している頃ならば、過剰なときに備蓄して、逼迫時に放出すればよいが、一本調子で逼迫が進んでいるときに、市場から一定量を隔離すれば、相場にさらなる上昇圧力をかけてしまう恐れすらあるからだ。

 一方、緊急の食料供給支援は、貧困層の生命を救う点で短期的には不可欠なものであったとしても、長期的にその国が存続していけるかどうかの状況の整備にはならない。それどころか、中長期でみれば、支援先の国々の農業生産を抑える効果を持つことから、最終的にアメリカの農家を喜ばすだけに終わる可能性もある。

 では、洞爺湖サミットでは、そうした問題点を踏まえたうえで、根本的な解決策を探る本質論は交わされたのだろうか。実は交わされていたと思われる。具体的には、途上国における農業生産の拡大支援である。ただ、その本筋論に移る前に、途上国にとって、昨今の食料価格高騰がどれほど深刻なものであるのかをきちんと説明しておきたい。途上国がなぜ穀物の輸入国になっているかという基本的なところを押さえておかないと、おそらくその根本的な解決策の意義は理解しにくいからである。

アジアの穀物輸入は飼料用
穀物をそのまま食べるアフリカへの影響は甚大

 まず解いておきたい誤解がある。それは、途上国が農産物を輸出して先進国が工業製品を輸出しているという認識だ。実際の構図はまったく異なる。途上国の多くは、工業製品だけでなく農作物についても輸入品に依存しているのである。

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山下一仁 [キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/経済産業研究所上席研究員(非常勤)]

東京大学法学部卒業。同博士(農学)。1977年農水省入省。同省ガット室長、農村振興局次長などを経て、2008年4月より経済産業研究所上席研究員。2010年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹。主著に『日本の農業を破壊したのは誰か―農業立国に舵を切れ』(講談社)、『企業の知恵で農業革新に挑む!―農協・減反・農地法を解体して新ビジネス創造』(ダイヤモンド社)、 『農協の大罪』(宝島社新書)、『農業ビッグバンの経済学』(日本経済新聞出版社)、『環境と貿易』(日本評論社)など。


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