全てが増え続けるインフレ経済
F1観戦も兼ねたコンフェレンス参加のため、1年ぶりにシンガポールを訪れた。街中に活力をみなぎらせるシンガポールに来て、色々考えさせられた。シンガポールは全てにインフレ気味だ。人口も増え、少しではあるが、埋め立てで面積も増え、人々の資産もGDPも増える一方だ。ついでにいえば、観光客もそれを引き付けるアトラクションもどんどん増えている。街中にクレーンが溢れ次々に新しいビルが、スポットが生まれている。政治家も官僚もビジネスマンも政治家も学者も適度に危機感を保ちながら、自信にあふれている。
シンガポールをはじめアジアの都市では屋上レストランがブームだ。超高層ビルの屋上にあり、オープンエアの街を見下ろすテラスを持つレストランだ。そのレストランに行ってみれば、人々が屋上レストランを好む意味はよくわかる。シンガポールの新名所、マリーナサンズの屋上のクラブでもあるレストラン、その名もクーデター。テラスから見下ろすシンガポールの街並みは常に変わるのだ。動力でグルグル回転する展望台にしなくても、たまに来れば街並みの変化がわかり、街のエネルギーを眺め感じながら食事をしているだけで自分も自信に満ち溢れてくる!
こういうインフレなエネルギーは、日本人では私のようなバブル世代がしっくりくるのだと思う。世界では常にバブルが生まれているのだが、日本では、残念ながらあれ以来バブルを感じることはできない。それを象徴するようなエピソードに出会った。日本で成功を収めた起業家たちの多くが、今シンガポールに集結している。税制や規制で海外ビジネスを優遇するシンガポールを拠点に世界に出ていこうという日本人起業家が多いのだ。素晴らしいことだ。しかし、彼らのうち何人かは壁にぶち当たっている。それは、インフレ経済の中で、デフレビジネスで成功することの難しさだ。
アジアで受けないデフレビジネス
日本では大躍進の格安ビジネスやコストカットのコンサルタント等の、いわゆるデフレビジネス。その多くはデフレしか知らない世代の起業家だ。彼らと懇談する機会があった。「我々が小学生や中学生の頃にはバブルが崩壊して、物心ついてからデフレしか知らない。インフレ真っ只中のシンガポール経済はびっくりです。安さやコストカットを評価してくれる顧客ももちろんいますが、高くても売れそう。いや高い方が売れそう。それに家賃は上がる一方です。ビジネスモデルを変えないと生きていけない」と口を揃える。