トランプ大統領による突然のイラン攻撃は世界にショックを与えた。中東情勢の悪化は、石油と電気自動車(EV)のビジネスにどれほど影響を与えるのか?ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏に緊急インタビュー。個人が投資をする際の判断材料にもなれば幸いだ。(国際ジャーナリスト 大野和基)

トランプ関税はもはや駆け引きの材料

――トランプ大統領は関税政策を二転三転していますが、結局どうなると思いますか?

ポール・クルーグマン氏Paul Krugman/ニューヨーク市立大学大学院センター教授。1953年米国生まれ。イェール大学で学士号を、マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。大統領経済諮問委員会の上級エコノミスト、世界銀行などの経済コンサルタントを歴任。2008年ノーベル経済学賞受賞。 Photo by Kazumoto Ohno

 トランプ大統領は関税政策を、駆け引きや交渉の材料として使っています。もはや、二転三転するのも仕方がないかと。見方を変えれば、柔軟性があるということ。もちろん、不確実性が増すことは経済にとって悪いことです。

 予測が立たなくて市場を混乱させる度合いがひどくなると、トランプ大統領は敏感に反応して、考えを変えています。短期的にはインフレを助長し、中期的には特に中国との関係が悪化し、世界的なサプライチェーンの再編が起こらざるを得ないでしょう。

 あまりにも二転三転することで、国際的な信用を失い、基軸通貨である米ドルの地位にも甚大な影響を及ぼします。しかし、ころころ変えるやり方は今後も変わらないでしょうね。交渉ツールとして、トランプ大統領は最も気に入っている様子ですから。

次のページでは、(1)世界経済で重要なポジションを占める電気自動車(EV)ビジネスは今後どうなるか(2)トランプ大統領の支持率は低下していないのか、「米国民の意外な反応」について話を聞きました。