カルチャースクールの講座にも行ってみたが、女性はグループでワイワイ楽しそうにおしゃべりをしているが、男性はやはり一人でいる人が多かった。

『定年後 50歳からの生き方、終わり方』
楠木新著
中公新書 定価780円(税別)

 もちろん一人ぼっちであることに問題があるというわけではない。一人でゆったりと時間を過ごすことが心地よい人もいるであろう。人と群れることを好まない人もいるに違いない。どちらかと言えば、私も一人が好きなのである。

 ただ、定年退職者を取材した時に、私の問いに正面から答えてくれた人たちのなかには、「毎日やることがなくて困っている」、「一番自由な今が一番しんどい」、「家で居場所がない」、「暇になったのに焦る」、「嫌な上司もいないよりはマシ」などと語られることがある。なかには「このままの毎日が続くと思うと、自分の人生は何だったのかと思うときがある」とまで発言した人もいたのである。

 彼らの発言と住宅地や都心をまわった取材を重ね合わせてみると、在職中は組織内での上司や同僚、部下との濃密な人間関係を築いているにもかかわらず、退職後はその関係が切れてしまい、自分の居場所が見つからなくなっている、ということだ。

 今まで長い間、企業社会のなかで朝から晩まで共同作業をやってきた人たちが、いきなり一人ぼっちになっては、力も意欲も湧かないのは当然であろう。

 定年退職者には、まず何よりも、“他のメンバーのために”何かをやらなければならない義務や役割、すなわち、人との「関係をつくる」作業が求められるのではないか。