医師の処方箋が必要な医療用医薬品(処方薬)から、処方箋不要のOTC(大衆薬)に転用された医薬品をスイッチOTCと言う。7月の国の「第2回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチOTC検討会)では、医療用医薬品である緊急避妊薬のスイッチOTC化の妥当性が議論された。医師、薬剤師、消費者代表などで構成される委員からは「OTC化は妥当ではない」という意見が相次ぎ、スイッチOTCそのものにあらためて注目が集まっている。『週刊ダイヤモンド』10月21日号の第2特集「追い風は本物か 踊り場のOTC」の拡大版としてキーパーソンたちのインタビューを全4回でお届けする。第3回は産婦人科医の北村邦夫・日本家族計画協会クリニック所長に聞く。(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)

きたむら・くにお/日本家族計画協会クリニック所長。1951年生まれ、66歳。88年から日本家族計画協会クリニック所長、現在同理事長。集英社新書「ピル」など著書多数。毎日新聞で「Dr.北村が語る現代思春期」連載中。 Photo by Masataka Tsuchimoto

――北村所長は緊急避妊薬が国内で医療用医薬品として承認された際に推進派だったことで知られています。まずは7月に開催されたスイッチOTC検討会への感想を。

 日本薬剤師会が積極的なスイッチ化推進派でなかったのが一つ驚いた。権利を奪われる産婦人科医と権利を奪う薬剤師の間で、もっと激論が交わされてもよかったと私は思う。

――緊急避妊薬とはどんな位置づけの薬なのですか。

 緊急避妊薬はきっかけであって完結ではない。より確実な避妊方法であるピルへとスイッチしていくきっかけが緊急避妊薬。日本の避妊方法は老いも若きもコンドームと膣外射精。男性主導型の避妊にとらわれつづけている。こんな国はない。避妊の主導権は女性が握ろう。これが私たちの変わらない主張です。

 ピルが米国で承認されたのが1960年。避妊の歴史は女性解放の歴史。女性たちが自分の意志で、確実な避妊方法を手に入れることができた。男支配から逃れることができた歴史的な1ページ。意図しない妊娠と出産がどれほど女性の人生を狂わせてきたか。男社会の支配を許してきたか。男性支配からの解放は、女性主体の避妊方法が確立されてから。それにもかかわらず、コンドーム、膣外射精の2つ(にほぼ避妊方法が限定された状況を)から変えられないのが日本。