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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第4回】 2011年10月31日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

最高か最低か――。両極の間に存在する
「中間の状態」に耐えられなくなった日本人

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曖昧なポジションにいることが難しくなっている

 官僚対政治家。脱・官僚。

 最近の政治状況でよく使われるフレーズです。これでは、官僚と呼ばれる人はすべて悪人であるかのような錯覚にとらわれてしまいます。

 官僚といえども、単純化しても良い人もいれば悪い人もいます。国民のために一生懸命仕事をしている人もいれば、自分の権力欲を満たすためだけに仕事をする人もいます。

 一方で、官僚は悪だ、官僚の不正を正すと声高に叫ぶ政治家に問題がなかったわけではありません。その後の行動や言動を見ていくと、必ずしも清廉潔白な正義の味方ばかりではないことがわかります。

 大阪府知事の橋下徹さんは、今や話題の中心にいる感があります。

 彼は市役所内の反対勢力に対する報復をちらつかせるなど、対立構造の状況を演出するのがとても上手な政治家です。しかし、橋下さんの政策一つひとつを検証すると、必ずしもうまくいっていない面もあるのではないでしょうか。

 「橋下さんの言うことはもっともだけど、橋下さんだって問題がないわけじゃない。公務員だけがすべて悪いわけじゃないよね」
「あの言い方では公務員が反発するのも無理はないなあ。とはいえ、公務員ももう少し何とかしなければいけないよね」

 このような表現の方が、ありのままを正確に言い表しているのではないでしょうか。

 極端に二極化した構造のなかにいると、私たちはどうしてもどちらが勝ち、どちらが負けるかという「勝敗」だけに目を奪われてしまいがちです。

 仮に「引き分けです」と言われた場合を想像してみてください。私たちはその結果を受け入れるのではなく、がっかりしてしまうのではないでしょうか。

 中間地点に立ち、双方の良いところも悪いところも見たうえで冷静な判断を下す。こうした「曖昧な」ポジションにいることが、とても難しい時代になってしまったように思えてなりません。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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