毎年、台風被害に遭う宿命を持つ日本人。台湾や米国にも「台風休暇」が存在するが、日本人は相変わらず鬼の形相で遅延する超満員電車に乗ったり、暴風雨の中でも危険を顧みず車で出勤を試みたりする。この狂気にも似た勤勉性を治さない限り、働き方改革は実現しない。(ノンフィクションライター・窪田順生)

台風21号で受けたダメージによって
22号の危険性はさらに増す

「台風休暇」導入を日本経済のためにも真剣に検討すべきだ雨が降ろうと槍が降ろうと会社を目指す…日本人の美徳と言えば聞こえがいいが、台風の危険すら顧みないほどの勤勉性は狂気だ。振り返れば、高度経済成長期はもちろん、戦時中から、日本人はこの病にかかっていた Photo:ZUMAPRESS/AFLO

 超大型の台風21号が列島各地に残した爪跡がまだ癒えないのに、またしても週末にかけて台風22号が上陸するらしい。

「また殺人的な満員電車でいつもの倍の時間をかけて出勤するのか」というサラリーマンたちの嘆き節があちこちから聞こえてきそうだが、もし上陸した場合はさらに深刻な「危機」も考えられる。

 21号によって、山間部は土砂崩れなどの危険が増している。都市部においても道路、橋、電柱、信号機などなど、ただでさえ老朽化の進んだインフラがダメージを負っている。そこへ22号が続くことで、「想定外」の被害を誘発しやすくなっている恐れがあるのだ。

 もし22号の上陸が通勤通学の時間帯に重なった地域の方は、自治体等の防災情報に耳を傾けて、ぜひ命を守ることを最優先した行動をとっていただきたい。

 ただ、どんなに「危機」を呼びかけても、日本人の多くは雨合羽を着込んで仕事に出かける。冠水しそうな道をマイカーで突き進み、電車が止まることを見据えて、いつもよりも早く駅へと向かう。

 大事な会議がある。大事な取引先がやってくる。納期が迫っている、上司だって出社するんだから…理由はさまざまだが、台風が直撃したくらいで自らの「やるべきこと」を放棄できないのが、日本人なのだ。

 責任感は立派だが、このようにして仕事に出かけた中で、「運」の悪い人たちが悲劇に見舞われるという厳しい現実もある。今回の21号でも6人の尊い命が奪われたが、そのなかのお一人は、NHKの選挙報道を手伝うアルバイトの方だった。

「異常気象」なんて呼ばれる極端な気象現象が増えているといわれているなかで、このような悲劇は減るどころか右肩上がりで増えていく、というのは容易に想像できる。