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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

ブラック企業じゃないのに休めない!
「びくびく社員」が増えている

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第20回】 2015年3月4日
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なぜ「会社を休めない」のか?
ある女性社員の不可思議なケース

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 実はブラックな職場を作る「心のダークサイド」というのは、実は一見ダークサイドには見えないことが多い。皆が持っている「ちょっとしたこと」が職場全体の雰囲気を変えてしまうことがあるのだ。

 今回はその「ちょっとしたこと」の例を紹介しよう。これはいくつかのインタビューで筆者が得た情報と、精神科医との共同研究で「新型うつ」や「ひきこもり」の患者さんらから得た情報を総合したものだ。

 きっかけは、ある女性社員から「会社を休めない」と相談を受けたことだった。当時、30代になったばかりの彼女は派遣職員として、ある会社の総務で働いていた。3ヵ月ほど経った頃から、仕事が忙しくなり、思うように休みが取れなくなったという。自分に仕事が集まるようになっても、誰も助けてくれず、自分一人が背負う形に。やがて残業は言わずもがな、土日出勤も頻繁にするようになり、有休などとれる状態ではなくなってしまった。

 筆者は最初、ブラックな職場なのかと思い、上司や同僚の言動も確認してみたが、特にそのような兆候はなかった。1人だけ、感情の起伏の激しい同僚がいて、時折彼女に厳しいことを言っていたが、それも常識の範囲だった。

 それに彼女以外の社員は、日本の会社としてはそれなりに休暇を取っていた。リーズナブルな理由があり、いない間の仕事の進捗について事前に段取りをしていれば、休暇をとることについては、上司も理解をしていた。むしろ彼女自身が「仕事を休めない」と思いこんでいるだけ、のようだった。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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