アップルが公開したiOS5の新機能で、さまざまなデータをパソコンやiPhoneなどで同期できるiCouldや、日本では現在利用できないものの音楽データを共有できるiTunes Matchなど、いわゆるクラウド・サービスが世界的な流行になっている。そんななか、10月18日に新たなクラウド型サービスがアメリカで開始された。紫外線という意味を持つUltraviolet(UV)がそれだ。
UVの仕組みは同サービスに対応した映画やテレビ番組のDVDやBDを購入し、添付されているコードをネットで入力すると、その作品をストリーミングやダウンロードで、パソコンやタブレット端末、スマートフォン、インターネット接続できるテレビなどで視聴できるというもの。クラウドでテレビや専用ドライブから解放されてあらゆる場所で楽しめるようになるというわけだ。家族6人までが1つの映像ライブラリーを共有することができ、かかるのはパッケージの購入費用だけで、UVの利用は基本的に無料である。
映画、ハード、小売りなど推進企業は多様
クラウドを活用してディスクを買わせるのがポイント
UVはワーナー・ブラザーズやフォックス、パラマウント・ピクチャーズなど大手映画会社はもちろんヒューレット・パッカード、マイクロソフト、インテルなどのコンピュータ関連、パナソニックや東芝、nVIDIAといったハードメーカー、大手小売チェーンのベストバイなど多種な企業70社余りで構成されているデジタル・エンターテイメント・コンテンツ・エコシステム(DECE)が推進団体となっている。特に展開の旗振り役となってきたのは映画と家電の両方を展開するソニーだ。
このサービスのポイントはクラウド型とはいえ最初にDVDもしくはBDを購入しなければならない点にある。今回のサービス開始最大の狙いは不振のDVD市場へのテコ入れだ。アメリカ市場でのDVD販売は急速に悪化しており、最近の調査ではその収益が前年度比で44%も縮小したという結果もあった。逆にストリーミングやDVDを毎月一定の利用料でレンタルする市場は今年前半46%も拡大したとされる。昔ながらのレンタルビデオ市場は縮小傾向にあるが、そのペースはDVD市場ほどではない。映像パッケージの販売ビジネスに関係する企業の焦りは大きいのだ。