
投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。では、その実力に即した配当額とはいかほどなのか。今回、さまざまな経営指標から、独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額との差をランキングにした。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#24では、電機業界90社の理論配当額との乖離額ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
電機業界で独自推計した理論配当額
それよりも高配当の企業は?
投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。ガバナンス改革などを背景に、株主還元を意識する企業が増えており、累進配当の導入や配当性向アップなどをアピールする事例も増加している。
一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。配当よりも成長投資を優先する企業や、内部留保の確保を重視する企業も存在するためだ。
では、それぞれの企業の配当額の“実力”とはどれくらいなのか。そこで今回、純利益やPBR(株価純資産倍率)といったさまざまな経営指標を基に、重回帰分析によって独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額がどれくらい上回っているのかを算出し、その乖離額をランキングにした。
この理論配当額は、同じような企業規模や“スペック”の企業の水準を考慮した、ある意味「妥当な配当額」とも呼べるものだ。ランキングを見れば、単純な配当性向の比較だけでは分からない、企業のスペックに対して配当を多めに出しているといえる「本当の高配当企業」の存在がくっきりと浮かび上がる。
一方で、乖離額がマイナス、つまり理論値よりも配当額が低い「配当出し渋り企業」の存在も浮き彫りとなる。だが、それは裏を返せば「配当ポテンシャルの高い企業」と見ることもできる。企業の方針変更次第では、それだけ配当を増やす“余力”があると考えられるからだ。
では、理論配当額との差が大きい企業はどこなのか。今回は、家電や電気製品、産業ロボットやファクトリーオートメーションなどを含む電機業界90社のランキングを紹介していこう。
電機大手では、2025年3月期に業績の伸びが目立つ企業も多かった。ソニーグループの純利益は前期比17.6%増となる1兆1416億円、三菱電機は同13.7%増となる3241億円だった。
一方、トランプ関税の影響により、今期の業績には不透明感が漂っている。幅広い分野にまたがる業種であるため、企業ごとによる差もまちまちだ。
そうした中で、“本当の高配当企業”だといえるのはどの企業なのか。日立製作所、キヤノン、ソニー、パナソニック ホールディングス、三菱電機、富士通、NEC、ファナック、キーエンス、ニデック、安川電機、SCREENホールディングス、アドバンテスト、ブラザー工業、セイコーエプソン、富士電機、リコー、オムロン、シスメックス……。その結果をランキングでチェックしていこう。
また、ランキングでは、アナリスト予想を基にした3期後の配当性向も掲載している。これを見れば、配当がどの方向で推移しそうかもチェック可能だ。次ページで、その詳細を公開する。