彼ら4人は、翌12年4月から11月にかけて相次いで解任され、その後の消息が不明であるという。いずれも金正恩が政権トップに就いた直後に、自ら信頼を寄せて推挙した軍部の幹部たちだが、彼らは金正恩の「疑心暗鬼」の犠牲になったと見られる。

 金正恩が政権を握って以来、最も恐れているのは、身の回りの幹部や側近の手による暗殺である。少しでも反逆の恐れがあれば、それが事実であれ思い過ごしであれ、直ちに粛清する。金正恩が政権の座についてからのわずか5年間で、粛清した総数は幹部や側近だけで340人超と言われている。

 この中には、今年2月にマレーシアのクアラルンプール国際空港で暗殺された異母兄の金正男もいる。前述の韓国の高官によると、遺体を引き取りたいという遺族の懇願を無視して、北朝鮮に強制送還された金正男の遺体は、残忍な手口で処分されたという。

 一部の報道によると、身を隠している故金正男の長男・キムハンソル(22歳)氏の暗殺計画もすでに進行中で、そのために編成された特殊部隊が世界中で暗躍しているという。中国の国家安全部は、このほどその暗殺工作員グループの一味を北京で逮捕している。幹部や側近たちも、非情で残虐な人権犯罪を繰り返し見せつけられては恐怖におののき、ひたすらひれ伏して、わが身を守るのが精一杯だろう。

北朝鮮国民が最も恐れる
「政治犯」と「連座制」

 金ファミリーの身内や政府高官だけではない。一般の国民はもっと悲惨な目に遭っている。金ファミリー3代にわたる独裁政権が国民に強要してきた、非人道的で常軌を逸した人権侵害の状況も深刻である。

 1つ目は、国民が最も恐れる「政治犯」と「連座制」について。政治犯とは一般に、体制に逆らう危険分子と見なされることであり、連座制とはある犯罪に手を染めた人と関わりのある人が共同責任を負わされ、処罰されることだ。

 1980~90年代に北朝鮮の政治犯収容所の警備員(看守)として勤務したあと脱北し、北の人権侵害がいかに凄惨で救い難いものかを告発してきた安明哲さんによると、政治犯とは名ばかりで、その際限のない恣意的な乱発・乱用が目にあまるという。