大王製紙の巨額借り入れ事件に、オリンパスの損失隠し――。日本企業で、史上稀に見る規模の不正事件が相次いで発覚した。そこで改めて問われているのが、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の重要性だ。だが、それにも限界がある。実際は、企業の不正が発覚した後に、司法や市場が厳正な対処を行なうことで、後に続くであろう新たな不正を抑制していくしかない。ところが足もとでは、オリンパスの「上場維持見通し」などが報道され始め、一部の投資家から疑問の声が上がっている。かつてのライブドア事件と比べ、今回の事件が曖昧な決着を迎えるのではないかというのだ。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)
あの大王製紙やオリンパスが――。
相次ぎ明るみに出る大手企業の超絶不祥事
大王製紙にオリンパス――。東証1部に上場する一流企業が起こした不祥事に、日本中が衝撃を受けた。
「ティッシュ王子」こと大王製紙の井川意高・前会長が、連結子会社から総額100億円を超える巨額借り入れを行ない、ギャンブルに明け暮れていた事件は、創業家一族による同族経営のリスクを、改めて浮き彫りにした。
とりわけ世間の注目度が大きいのは、大王製紙と前後して報道され始めたオリンパス事件だ。マイケル・ウッドフォード元社長の解任騒動をきっかけに、企業ぐるみで行なわれていた「損失隠し」の巧妙な手口が明るみに出始め、企業体質への疑念が噴出した。
まだまだ捜査の過程ではあるが、投資で出した巨額の損失を、社外の投資ファンドを利用するなどして表面化させない損失隠しが1990年代から行なわれていた可能性が高く、問題の根は深い。
これらの騒動により、大王製紙とオリンパスの両銘柄は、決算関連書類を期限内に提出できず、監理銘柄に指定されている。つまり、上場廃止の恐れがあることが、投資家に周知されたわけだ(ただし、来月14日までに提出できれば、指定は解除される)。