取引先の倒産、夜逃げに備えよう――。そう言われたとき、真っ先に思い浮かべた顔は客先だっただろうか。それとも仕入先だっただろうか。中国で今、倒産と夜逃げが急増しているが、日系企業が気をつけるべきは、客先よりも仕入先である。

 中国では、資金がショートして倒産する企業が増えている。

 今年9月、中国華東地域の中堅都市、浙江省温州市にある従業員3000人の老舗メガネメーカー信泰集団会長が、20億元(日本円で240億円相当)の負債(うち6割は高利貸し)を抱えて夜逃げした話は大きなニュースとなった。他にも、従業員を慰安旅行に行かせている間に、会社社長が親類一同夜逃げをした、などの話を聞いたことがある方も少なくないだろう。

 何もこれは特別な例ではない。現在、中国のあちこちで資金難におちいって倒産寸前の会社が増えている。弊社にも、最近、この手の相談が増えている。

 特に輸出企業が集中する沿海部では、人民元高、人件費・原材料コストの上昇で経営が行き詰まったうえに、政府の金融引き締め政策に引導を渡される形となっている中小企業経営者も少なくない。

金融引き締め政策は
私営企業を追い込む

 金融引き締め政策のもとでは、中国の国営金融機関の貸出可能資金は、ほぼ全て国営企業に回ることとなり、私営企業には回らない。銀行から融資が受けられないと経営活動を継続できない私営企業の社長達が、今まさにカネの工面に奔走しているという状況なのだ。

 本業だけならまだしも、投資やギャンブルなどの副業にもハマって失敗してしまった社長は、もう闇金融に駆け込むしかない。闇金から月利10%、年利120%で当面の運転資金を借りたはいいが本業のビジネスをいくらやっても返せる訳はない。それなら一族郎党夜逃げしかないとなるわけだ。

 中国の場合、そういったヤミ金融への資金供給はブラックマネーだけではない。普通の企業や個人からもカネを集めている。