トヨタが合意した日野自動車の経営統合、“裏の標的”が「テスラとBYD」だと言えるワケ写真はイメージです Photo:dogayusufdokdok/gettyimages

ある意味で総合商社的な存在であるトヨタ自動車が、強みを生かした特定分野に集中し投資を行う方針にかじを切っている。日野自動車の経営体制の変更で、トヨタと協力体制の象徴だった羽村工場はどうなるのか?トヨタがテスラやBYDを追いかける戦略とは?日産自動車の業績悪化でマレリが再び経営破綻する中、自動車業界の再編はどのように進むのだろうか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

“総合商社”トヨタのラインアップに変化の兆し

 トヨタ自動車と独ダイムラートラックは、日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの経営統合で最終合意した。トヨタはこれまで乗用車事業で得た収益を使って、日野自動車の再建を支えてきた。その背景には、トヨタの得意な乗用車部門に加えて、ラインアップとしてトラックなどの商業車部門もそろえておきたい考えがあったのだろう。

 ところが、今回の合意を見る限り、そうしたラインアップの考え方に変化が訪れているようだ。ある意味で総合商社的な存在であるトヨタが、独自の強みを生かして特定の分野に集中して投資を実行する方針にかじを切ったとみられるからだ。それは欧州の自動車メーカーにとっても同様で、特に2018年ごろから乗用車とトラック事業を分離し、乗用車分野での研究開発体制を拡充する企業が増えている。

 商用車分野でも、電動化や自動運転技術の開発を急ぐ企業が相次ぎ、開発には多額の費用を必要としている。その経営資源を集中的に投資するためには、幅広い商品提供をするビジネスモデルが難しくなりつつある。乗用車、商用車それぞれ当該部門の専門メーカーが投資を行う分業体制にシフトしつつある。

 今回の統合合意は、そうした流れを如実に表しているといえる。トヨタは日野の経営をダイムラートラックに委ね、トラック事業と相応の距離を取ろうとしている。今後、乗用車部門では乗用車メーカー同士、商用車分野でも強いメーカー同士の合従連衡が増加するに違いない。