「RAV4 EV」「テスラ」
「フィスカー」がいないワケは?
2011年11月16日、米カリフォルニア州LAオートショー(ロサンゼルス・コンベンションセンター/一般公開11月18~27日)の報道陣向け公開日。その模様は日系のテレビ、新聞、ウエブなどを通じて日本時間17日に報道された。それらの内容は概ね、『ホンダの電気自動車フィットEVの量産車が初登場。これを契機に、アメリカでのエコカー普及が進む』という軽いタッチだった。
だが、筆者が同ショーの現場で詳しく取材してみると、アメリカの電気自動車市場での変動を強く感じた。
最も強く印象に残ったのは、トヨタ・テスラだ。本連載第62回「電気自動車で先を行く日産を追う・トヨタとホンダの歯切れが悪い裏事情」で紹介したように、1年前の同ショーは、トヨタと米電気自動車ベンチャー「テスラ」が共同開発の「RAV4 EV」の記者会見で大いに盛り上がった。だが今年の同会場には、「テスラ」のブースはなく、トヨタのブース内にも「RAV4 EV」の姿はなかった。日米のメディアの多くから「あれだけブチ上げたのに、どうして今年は展示がないのか?」という声が聞かれた。
筆者は今年5月、同車初期開発モデル/フェイズゼロをトヨタモーターセールス(米国トヨタ/LA近郊のトーランス市)を基点に、その周辺一般路で試乗した。加速感、ブレーキ性能、さらに電気自動車特有のインバータ音の少なさなど、ベンチャー企業の技術にトヨタ品質が加わったことによる、商品としての「ある一定レベル以上の安心」を感じた。
だが、本連載で再三指摘しているように、この事例はトヨタの次世代車ロードマップのなかに「降って湧いたような存在」だ。トヨタにとってテスラとの連携は、GM破綻により課題となったGM・トヨタ合弁工場(旧NUMMI、北カリフォルニアのフリーモント市)の売却問題の解決策が最終的なフックであり、さらには「トヨタの北米内の企業イメージ向上を含めての、テスラというブランドの先物買い」という側面が強い。