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岸博幸のクリエイティブ国富論

米国で盛り上がる格差議論から学ぶこと
成長と社会的平等をいかに実現するか

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第166回】 2011年12月2日
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 今年出されたIMFのレポートでも、富裕層と貧困層の格差が小さい社会ほど、長期にわたる景気拡大が可能となり、格差が拡大傾向にある米国では、今後の景気拡大は1960年代の1/3程度の長さしか持続しないだろうと述べています。実際、戦後の米国の平均的な景気拡大期間は4.8年ですが、現在の景気拡大はまだ27ヵ月しか経っていないのに、来年早々には景気後退に陥る可能性が高いと言われています。

 また、シカゴ大学ビジネススクールのラジャン教授は、格差が大きい社会ほど貧困層は将来の所得増大を期待しなくなるので、政策的には再配分政策が志向されるようになり、また政治的に不安定となる結果、外的ショックへの対応として成長維持のために必要な厳しい政策が取れなくなると述べています。

日本でも拡大する格差

 こうした議論の延長で、米国では、格差は株価にも影響すると言われ出しています。経済的な正義が実現されていないと、金融市場では一部の人しか儲けられないという認識が広がり、多くの潜在的投資家が市場から離れてしまうという認識です。実際、大恐慌のときにそのような動きがあったため、ダウジョーンズ工業平均株価は1929年のピーク値335.95を、1954年まで回復できなかったとのことです。

 従って、所得格差の是正に取り組まないと、1929年の大恐慌や現在のような経済危機が、繰り返し起きることになると主張されています。

 それでは、日本はどうでしょうか。国税庁の民間給与実態統計調査を見ると、2010年の給与所得者の平均給与は年間412万円(ピークの1997年(467万円)から約12%減少)ですが、4550万人の給与所得者のうち200万円以下の人の割合は23%、300万円以下だと41%にもなります。これに対し、給与が2000万円以上の人の割合は0.4%に過ぎません。

 すなわち、米国ほど極端ではありませんが、日本でも格差は拡大していると考えざるを得ません。バラマキという再分配政策を主張した民主党が政権の座に就いたことも、ねじれ国会で政治が混乱していることも、格差の拡大がその一因なのかもしれません。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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