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トップ営業マンの説得術

あえて「欠点を示す」ことで相手の信用を得る

プロセス4:説得力を行使する

榊 博文 [慶応義塾大学文学部教授/社会学博士]
【第7回】 2008年6月17日
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営業において、説得力・交渉力は不可欠なもの。これまでは自己流で身体で学ぶというのが主な方法でしたが、説得のメカニズムを「科学」しておけば、誰でも効果的に説得力を身につけられるのです。

 前々回前回の2回に渡って、相手を知り、そのタイプによって説得法を変えることの重要性をご説明しました。今回は、実際に説得していくうえで大切な「情報量」についてご紹介します。

 多くの人は相手を説得したいという気持ちから、つい自分に都合のよい面ばかり強調し、大量にそういう情報を並べてしまいがちです。しかし時にはそれが効果的ではない場合もあります。次のケースを見て考えてみましょう。

「いいことずくめで信用できない」
セールス・エンジニアのGさんのケース

 セールス・エンジニアのGさんは、半年以上も大手企業のJ社に営業攻勢をかけてきました。その甲斐あって、ついに決定権者である事業部長へのプレゼンテーションまでこぎつけました。

 提案書には、自社が有する最先端技術を盛り込んだり、J社の業績を改善するかについても仔細にシミュレーションしたり、費用対効果の面でもメリットが出るように価格設定したりと、とにかく万全を期してプレゼンテーションの場に臨みました。Gさんのプランはライバルのものと比較しても遜色なく、かなり業界の先端を走るような内容でした。

 事業部長も部下から「十分検討に値する内容」だと聞かされていたこともあって、真摯な態度でGさんの説明に聞き入っていました。一部門の長ならではの鋭い質問もいくつか出され、Gさんもそれなりの手応えを感じて、その場は終了しました。

 しかし、結論は「ノー」でした。

 Gさんはどこで失敗したのでしょうか。事業部長の部下で日ごろから親しくしている1人に理由をたずねたところ、「いいことずくめで信用できない」ということでした。百戦錬磨の部長からすると「新しい技術こそ、リスクが高い」ものであって、「だからこそ、その点を理解しているベンダーと付き合いたい」というものだったのです。

 一般的に、説得情報の量は多ければ多いほどいいといわれていますが、相手が説得内容への関心が高い、あるいはそれに関する知識に長けている場合、物量作戦は逆効果となり、質の深度が問われるケースが多いのです。反対の場合は、もちろん説得の回数を増やしたほうが説得効果は高くなります。

 Gさんはプレゼンテーションの内容だけでなく、情報の伝達方法、情報の質と量、プレゼンテーションのシナリオについても考慮すべきだったのです。

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榊 博文 [慶応義塾大学文学部教授/社会学博士]

慶応高校から慶応義塾大学経済学部を経て、慶応義塾大学院社会学研究科博士課程修了。米国スタンフォード大学留学。専門は社会心理学。主として効果的な説得戦略、およびイノベーションの効果的な普及戦略に関する研究に従事。主な著書に『説得と影響―交渉のための社会心理学』『日本列島カルト汚染―説得と勧誘の社会心理学』(いずれもブレーン出版)などがある。


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