相場で勝ち続ける秘法「聖杯」の存在と、
それに限りなく迫った投資家とは？

2017.12.14 4:50

田渕直也

たぶち・なおや

[株式会社ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役]

金融アナリスト、コンサルタント。株式会社ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役。日本長期信用銀行にて、デリバティブを利用した商品設計、デリバティブのディーリング、ポートフォリオマネジメント等に従事する。その後、海外証券子会社であるLTCB International Ltdに出向。デリバティブ・ディーリング・デスクの責任者を務める。帰国後、金融市場営業部および金融開発部次長。銀行本体のデリバティブ・ポートフォリオの管理責任者を務める。2000年より、UFJパートナーズ投信（現・三菱UFJ投信）にてチーフファンドマネージャーとして、債券運用、新商品開発、フロント・リスク管理、ストラクチャード・プロダクツへの投資などを担当。著書に、『図解でわかるランダムウォーク＆行動ファイナンス理論のすべて』『世界一やさしい金融工学の本です』『デリバティブのプロが教える金融基礎力養成講座』『確率論的思考』（以上、日本実業出版社）、『カラー図解でわかる金融工学「超」入門』（サイエンス・アイ新書）、『投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について』『ファイナンス理論全史』（ダイヤモンド社）など。1963年生まれ。85年一橋大学経済学部卒業。

ファイナンス理論全史

投資のリスクと利回り(リターン)や、投資対象の価値や価格を、統計学的にわりだす現代ファイナンス理論。この比較的新しい学問がどのように発展を遂げてきたのか、キーパーソンの人となりや理論発見にまつわるエピソードをひもときつつ、主要理論のポイントをわかりやすく解説し、どのように役立てればよいのかヒントをくれる投資読み物『ファイナンス理論全史』刊行を記念し、一部をご紹介していきます。

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浮き沈みのある相場で長期的成功を収めることこそ難しい

　相場の世界では、少なからぬ投資家が偶然の助けも借りて束の間の成功を収めます。ですが、それを長期的に継続していくことは極めて困難なことです。

　長い目で見れば、相場にはよいときもあれば、悪いときも必ず訪れます。その浮き沈みを通して安定した成績を残すためには、相場の本質への理解が欠かせません。短期的な成功の権利は誰もが手にすることができますが、長期的な成功の権利は決して簡単には得られないのです。

　経験論に頼ったり、耳に心地よい言葉にすがったりするだけでは、その大きな壁を乗り越えることは難しいでしょう。それならば、相場の本質を突きとめようと苦闘した先人たちの知恵を存分に活用するに越したことはないはずです。

　さらにいえば、現実の投資での勝ち負けという観点から離れて見ても、彼らの足跡を追うことは、知的好奇心を大いに刺激するものとなるに違いありません。「相場」は、とても大きく、複雑で、謎めいた存在です。その本質に迫るための材料として、本書を存分に活用していただければ、著者としてそれ以上の喜びはありません。