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西沢和彦の「税と社会保障抜本改革」入門

本当は年金給付抑制のための大芝居
抜かずの宝刀「マクロ経済スライド」の功罪

西沢和彦 [日本総合研究所調査部上席主任研究員]
【第4回】 2011年12月13日
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 前回、「100年安心な年金」の意味について考えた。簡単におさらいしておこう。

(1)「100年安心」は、年金財政において今後およそ100年間を通してみれば、収支相等が成り立つという厚生労働省推計を拡大解釈した政治的キャッチコピーである。

(2)収支相等とは、年金財政が一定期間を通じ最終的に帳尻が合うことを意味する年金用語である。収支相等が成り立つこと自体、年金財政にとって必要であるが、それだけでは十分ではない。世代間の公平性が考慮されていないためである。

(3)収支相等を成り立たせる手段として、2004年の年金改正において導入されたのが、マクロ経済スライドである。そのマクロ経済スライドも、いまだ機能しておらず、それによる財政的ツケは将来世代に先送りされている。早急な見直しが必要である。

 今回は、このマクロ経済スライドの仕組みとその問題点を掘り下げよう。

給付抑制のために編み出される

 マクロ経済スライドは、後に説明するように、実に迂遠で分りにくい。ネーミングも何を意味しているのか分からない。そもそも、なぜ、こうした方法が考えられたのか。年金数理(年金財政を対象とする数学)の視点から給付抑制の手法を選択するならば、即座に年金額をカットするのが、最も手っ取り早い。

 わが国の年金財政は、そのときどきの現役層から年金受給層へ所得を移転する賦課方式で運営されており、高齢化率が高まるなか、給付水準の抑制が必要であることは明らかである。とすれば、直ちに年金額をカットすれば、その分、年金財政は確実に改善する。将来世代も楽になり、世代間の公平にも適う。

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西沢和彦 [日本総合研究所調査部上席主任研究員]

ニシザワ カズヒコ/1989年3月一橋大学社会学部卒業、同年年4月 三井銀行入行、98年より現職。2002年年3月法政大学修士(経済学)。主な著書に『税と社会保障の抜本改革』(日本経済新聞出版社、11年6月)『年金制度は誰のものか』(日本経済新聞出版社08年4月、第51回日経・経済図書文化賞) など。(現在の公職)社会保障審議会日本年金機構評価部会委員、社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会委員。


西沢和彦の「税と社会保障抜本改革」入門

増加する社会保障費の財源確保に向けて、政府は消費税引き上げの議論を本格化させている。だが、社会保障をめぐる議論は複雑かつ専門的で、国民は改革の是非を判断できない状態に置かれている。社会保障の専門家として名高い日本総研の西沢和彦主任研究員が、年金をはじめとする社会保障制度の仕組みと問題点を、できるだけ平易に解説し、ひとりひとりがこの問題を考える材料を提供する。

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