
2024年の財政検証を受けた年金改革法案には基礎年金底上げ策が含まれている。これには、前後の世代に比べ明らかに水準が低い氷河期世代の年金を引き上げる狙いがある。特集『大企業が賃金を収奪!「階級社会」の不幸』の#6では、氷河期世代の心もとない年金の現状を明らかにするとともに基礎年金底上げの効果を検証する。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
参院選前に年金改革法案迷走
氷河期世代の救済は先送り?
選挙を気にする政治家のエゴで、年金改革法案が迷走。就職氷河期世代の救済策が“先送り”されようとしている。
2024年の年金の財政検証を受けた今回の年金改革法案には、基礎年金の底上げ策が含まれている。厚生年金の財源を“横取り”するとの批判はあるものの、実は大きな狙いの一つは、現行制度では低い氷河期世代の年金の引き上げである。
年金改革法案は本来ならば、遅くとも3月中旬には国会に提出されるとみられていた。だが、いまだに国会に提出されていない。自民党の中での意見集約が進んでいないためだ。
その最大の理由は、基礎年金の底上げのために、厚生年金受給者の受取額が一時的に減少することや、税による負担が最大で2.6兆円前後増え、増税が想起されることである。7月の参議院議員選挙を前に、国民に負担や犠牲を強いることを決めたくないのであろう。
基礎年金の底上げがなぜ氷河期世代の救済につながるのか。制度改正の恩恵を受けるのは誰で、負担増の割を食うのは誰なのか。
次ページ以降、公的年金制度の仕組みを解説しつつ、説明してゆく。