“伝説の外資トップ”こと新将命氏が、ビジネスパーソンに役立つアドバイスを語る本コラム。前編「あなたの『人生の残り時間』は意外に少ない」にひきつづき、今回は「学ぶ習慣」について語っていただく。
「ビジネスパーソンが身につけるべき最も重要な財産とは何でしょうかと問われたら、私は迷わず『学ぶ習慣』と答えます」と言い切る新氏。グローバル・エクセレント・カンパニー6社で20年近くにわたり経営職を務めてきた人物ならではの「学び」の秘訣とは――。

大変の時代、大変しないと大変だ

新 将命(あたらし・まさみ)株式会社国際ビジネスブレイン代表取締役社長。1936年東京生まれ。早稲田大学卒。シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスなどグローバル・エクセレント・カンパニー6社で社長職を3社、副社長職を1社経験。2003年から2011年3月まで住友商事株式会社のアドバイザリー・ボード・メンバーを務める。長年の経験と実績をベースに、国内外で「リーダー人財育成」の使命に取り組んでいる。
希薄な虚論や空論とは異なり、実際に役に立つ“実論”の提唱を眼目とした、独特の経営論・リーダーシップ論には定評がある。ユーモアあふれる独特の語り口は、経営幹部層や次世代リーダーの間で絶大な人気を誇る。近著『経営の教科書』(ダイヤモンド社)、『伝説の外資トップが説く リーダーの教科書』(武田ランダムハウスジャパン)は、現役経営者、若手リーダーの必読書となっている。

 いま、約4400万におよぶ日本の所帯のうちの4分の1弱は金融資産がゼロだそうです。国民金融資産が1500兆円(借金を除くと1000兆円)もあるという半面、貯金がゼロという家庭が4軒に1軒弱という現状です。

 国民年金も厚生年金もますますあてにならなくなりつつあるという事実を考えると、状況は今後ますます厳しくなっていくでしょう。

 人生、お金がすべてではありません。いくら大金を持っていても病気ばかりしていたり、家族が仲違いしていたのでは幸せとは言えませんね。だからお金は、人生の幸せづくりのための十分条件ではありえません。

 とはいえ、無一文では生きていけないのもまた事実。「Money is not everything, but money is something.(金がすべてではない。だが、多少は必要だ)」という言葉もあるとおり、食うにも事欠くような貧しさでは気持ちも荒むし、自分が惨めに感じてしまうでしょう。

 お金があるから幸せになるとは限らないけれど、お金がないと不幸になることはよくあるわけです。したがって私は、お金とは人生の幸せづくりのための必要条件だと思っています。

 喜劇王チャップリンの有名な作品『ライムライト』で、チャップリン演じる老道化師が、足を挫いている傷心のバレリーナを慰めてこう言うシーンがあります。

人生はどんなにつらくても生きるに値する。
そのために必要なものは、
勇気と想像力と、サムマネー(Some Money)だ。

 サムマネー(Some Money)であって、マッチマネー(Much Money)ではないところに人生の機微を知り尽くしたチャップリンらしさがにじみ出ています。