中小企業の経営者などのあいだで“節税”商品として人気の高い「法人向けガン保険」が、事実上の販売停止に追い込まれている。
すでに先月から、一部商品の販売を自粛している生命保険会社も複数出ており、節税効果をうたう法人向け商品が、また一つ消える運命をたどりそうだ。
業界関係者によると、国税庁が先月24日、生命保険協会に対し法人向けガン保険について「税務取り扱いの見直しを前提とした検討を行う」旨の通達を行った。この通達を受け、生保各社は急きょ、販売代理店に販売停止や、商品説明方法に注意を促す通達を出すなど対応に追われている。
本来、この保険は、事業主や社員の治療費など福利厚生を目的とするもの。だが、条件を満たせば保険料を全額損金扱いできるため、課税対象となる利益を保険料に回して利益を圧縮することで節税できる。
また、解約時や失効時に契約者に払い戻される解約返戻金として帳簿外に利益をプールすることも可能で、この解約返戻金の割合は80~90%、商品によっては100%になるケースもある。これらの特徴から、実際には「節税対策が最大の“売り文句”となっていた商品だ」(大手生保)。
今回の国税庁の見直しは、保険商品ではなく節税商品として過度な商品開発が行われている現状に、急ブレーキをかけるという観測が強い。
法人向けガン保険は、外資系生保や新興生保を中心に販売され、近年は中小企業マーケットを狙う国内生保も参入し、競争が激化していた。
保険金額が加入年数とともに増加する逓増定期保険など、節税効果をうたう商品の税制改正が続くなか、今回の国税庁の動きは「法人向けガン保険を看板にする一部生保だけでなく、節税を売り文句にしていた代理店にも、頭の痛い事態」(別の大手生保)だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)