習近平政権を
憎んでいるのは誰か

 習近平政権が発足してから約5年が経った。中国政治・経済社会の安定性や発展性という観点から、一つ重要だと思われる問いを投げかけてみたい。

「誰が最も現状に不満を持ち、不安を感じ、政権を憎んですらいるのか?」――。

 いろんな角度や見方があるだろうし、当事者たちに直接聞いてみれば「私たちが一番辛くて大変だ」という自意識を露わにするかもしれない。

 例えば、経済情勢が低迷している遼寧省瀋陽のタクシー運転手に聞けばそう言うだろう。北京で言論活動をするリベラル派知識人に聞けばそう言うだろう。深センで起業したばかりで右も左も分からない大学卒業生に聞けばそう言うだろう。甘粛省奥地の農民たちに聞けばそう言うだろう。広東省や浙江省で資金繰りに苦しむ商人たちに聞けばそう言うだろう。大学受験を目前に控えた高校生、およびその両親に聞けばそう言うだろう。自らの事業を通じて大金持ちになり、有名にもなり、世論や権力から目をつけられている実業家たちに聞けばそう言うだろう……。

 農民、中産階級、富裕層、研究者、ビジネスマン、若者…それぞれにそれぞれの不満や不安が蔓延しているのが現状であると思う。

 しかしながら、習近平政権の特徴、あるいは前政権との比較という観点から、私から見て、これらの人々とは比較にならないほど現状に怯え、前途を悩み、政権を憎んでいる集団が官僚たちである(ここでいう“官僚”と軍人は重なる部分もあるが、本文で言及する官僚は党・政・軍で言うところの党・政に限ることとする。人民解放軍に対する“反腐敗闘争”も大々的に展開されており、中央軍事委員会副主席2人を含めた大物軍人たちも実際に“落馬”している。しかし、私が見る限り、軍隊の中ではこれまで腐敗しきった組織構造に不満を持ってきた関係者もかなり多く、習近平による反腐敗を歓迎・支持する声もかなり聞こえてくる)。