ダイエット、スポーツジム、読書、英会話、資格……「今度こそ」と新しい目標を立てた人へ。全米ほか世界各国で大ベストセラーになっている『小さな習慣』から、いつの間にか目標を達成する方法をお教えします。目標が小さければ小さいほどいい理由とは?(文/友清 哲)

壮大な目標設定は無意味である

 不規則な食生活のせいか、それとも年齢的なものなのか、少しでも油断をするとすぐにお腹まわりがたるみ始める今日この頃。

 決してこのままずるずる中年太りを受け入れるつもりはなく、「よし、しばらく酒を控えてジム通いをしよう」と一念発起するものの、やれ「仕事に追われて時間がない」、やれ「酒の席も付き合いのうちだから仕方がない」と、目標を後回しにする言い訳ばかりが湯水の如く湧いてくる。――こんなこと、誰しも経験があるだろう。

 “明日から本気だす”の精神は、掲げた目標を順調に風化させていく。しかし一方で、何事も目標を立てることから始まるのも事実。その点、「痩せたい」という目標は、極めてシンプルでわかりやすいものであるはずなのに、なぜスムーズにそこへ向かうことができないのか?

 答えは簡単。「酒を断つ」「ジムへ行く」という目標が、筆者にとっては壮大で現実味のないものだからだ。

『小さな習慣』 スティーヴン・ガイズ著/田口未和訳 1400円+税 ダイヤモンド社刊

 世に目標達成のための作法を説く啓発書は数あれど、スティーヴン・ガイズが『小さな習慣』の中で標榜する「目標は、ばかばかしいぐらい小さくしろ!」という方針は、非常にユニークな部類だろう。

 なにしろガイズは、「○○したい」という感情に頼ること自体を無意味と断じ、「モチベーションを上げたいと思ってはいけない」とまで明言しているのだ。

 では、目標に向かうために、我々はどうするべきか。それは、極めて小さなことを習慣化し、自分の脳を飼い馴らす努力をすべきだとガイズは言う。

スタートは、たった1回の腕立て伏せから

 今ではフィットネスジムでトレーニングに励み、体づくりに適した食事を摂るのが当たり前の生活を送っているガイズだが、もともと運動する習慣を持っていたわけではない。むしろ、怠惰な生活によって着実に体力を失っていく状況に焦りを募らせ、それでもトレーニングに向かうことのできない自分を嫌悪していた様子が窺える。

 そこである年の元日、今年こそ生活習慣をあらため、体を鍛えようと決意した彼は、30分の筋トレに励もうと思い立つ。ところが、ほんの30分の運動を本能的に厭がる自分に気づき、愕然とするのである。

 アップテンポなBGMをかけても、鍛えられた体をビーチで披露する自分の姿を想像しても、微動だにしない自分の意志。これではこの先、フィットネスジムに通うことなどまず不可能だと痛感したガイズは、様々な思考展開の末、ある1つのアイデアに到達する。それは、目標を「1回だけ腕立て伏せをする」に切り替えることだった。なぜなら、その時点の彼にとって、「30分の筋トレ」はエベレスト登頂に等しいほど高く険しいハードルであると悟ったからだ。

 もちろん、たった1回の腕立て伏せで、体が鍛えられるわけがない。しかし、誰しも30分の筋トレは億劫でも、1回なら構えることなくその場でこなしてしまえるだろう。ガイズはこの心理に着目したわけだ。

 実際、1回だけ腕立て伏せをするために体勢を整えてみると、「せっかく始めたのだから、もう何回かやってみるか」と脳が欲張り始める。そこで5回、10回とささやかに回数を重ねてみると、久しぶりに稼働した筋肉にほどよく血が巡り、体が温まるのを実感する。

 こうなるとさらに脳は欲張りになり、「どうせなら懸垂も1回だけやってみよう」とメニューを追加。1回こなしてみると、「せっかくだから」ともう2回、3回と懸垂が続く。結局ガイズはこの日、トータルで20分ほどの運動をこなしたという。