永井酒造の永井社長とフレンチランドリーのヘッドソムリエ。人口3600人程度の群馬県川場村で初声を上げ、世界の一流レストランに認められる永井酒造の実力とは

フランスワインに負けたくない
日本酒を世界に広める群馬の酒造

 近年、政府の後押しもあって日本酒の輸出量が増えている。だが、群馬県北部にある川場村の永井酒造社長・永井則吉(45歳)は、「まだまだ始まったばかり」と言う。

「日本酒の輸出額は、まだ100億円を突破したばかり。それに比べてフランス一国のワイン輸出金額は1兆円と日本酒の100倍です。日本酒は国内外すべての市場を足しても7000億円と、世界のワイン市場全体の数千分の1でしかありません。日本酒の魅力を考えれば、どんなに少なくても2兆円のマーケットはあるはずです」

 世界中に普及しているワインと日本酒を比べるのは無謀だと言う人もいるかもしれないが、永井は日本酒の魅力を信じ、長い時間をかけながら、着実に世界に広げている。ワインと同じ土俵で日本酒を評価してほしいと世界に働きかけ、実際に名だたる人たちを動かしてきた。

 永井酒造の酒が売れればいいというのではなく、日本酒を支えてきた日本の文化そのものを人口3600人程度の小さな村である川場村から発信しようと真剣に考えている。

 永井酒造は創業1886年と酒蔵としてはそれほど古くはない。永井は6代目の社長だ。

 銘柄には「水芭蕉」や「谷川岳」があり、売り上げは7億円強と決して大きいわけではない。しかし、永井と永井酒造の名前が大きく注目されたのは、2008年に発売されたスパークリング(発泡)日本酒「水芭蕉ピュア」だった。

 まさに日本酒のシャンパンが生まれたことで業界を驚かせた。というのも、それまで炭酸を添加した日本酒やアルコール度数の低い濁ったスパークリング日本酒はあったが、シャンパンと同じ瓶内二次発酵で、アルコール度数が清酒並みの13度、瓶内のガス圧がシャンパンと同等の5~6気圧、という条件を実現したのは初めてだからだ。