カプコン会長が50代で始めたワイン事業で大成功できた理由Photo by Yoshihisa Wada

日米貿易摩擦がきっかけで手に入れた470万坪の適地

 今回は、カプコンではなく個人事業である「ワイン事業」についてお話ししたい。

 私はアメリカ・カリフォルニア州のワイン産地としての有名なナパバレーに、「KENZO ESTATE」(ケンゾーエステイト)という個人の会社を持っている。ナパの丘陵地帯に470万坪という広大な敷地を保有しており、このうち厳選した2%の土地を使って葡萄を栽培し、ワインを造っている。

 KENZO ESTATEのワインが初めてリリースされたのは2008年。この年はよその醸造所に醸造を依頼したが、翌09年には自前の醸造所とワインを熟成させる洞窟(ケイブ)が整った。そして葡萄栽培から醸造、樽による熟成、瓶熟成に至るまでのワイン作りのすべての工程をワイナリー内で完結できるようになった。これで晴れて100%自社製造の優良ワインである「エステイトボトル」を名乗ることができる。

 今、KENZO ESTATEでは7種類のワインを作っている。赤では「紫鈴rindo」「明日香asuka」「藍ai」「紫murasaki」、白では「あさつゆasatsuyu」「夢久muku」、ロゼでは「結yui」だ。すべてが直販で、日本国内では、東京の広尾と六本木ヒルズ、大阪では梅田、京都では祇園にある直営レストランの他、全国2000店のレストランで楽しんでいただける。直営店ではフルボトルで1万円からで、最も高い「藍ai」は3万4800円で出している。

「ちょっと高いな」と思われるかもしれない。しかし、これからの話を聞いてもらえれば、絶対に「飲んでみたい」と思ってもらえるはずだ。

 そもそも事のきっかけは、カプコンのゲームがアメリカで大人気を博したことにあった。カプコンは1985年にはシリコンバレーにアメリカ市場の拡大に向けた販売会社を設立していたため、私も頻繁にシリコンバレーを訪れていた。

 そんなとき、「子どもがゲームばかりしていて家の中に張り付いているのはよくない」という世論がにわかに強まってきた。背景には、80年代の日米貿易摩擦の問題も見え隠れしていた。

 これを放置するとゲーム事業そのものが危なくなると思い、「それならば屋外のアミューズメント施設をやってみよう」とシリコンバレーからも遠くないナパバレーに470万坪の土地を購入した。それが現在のワイナリーで、90年のことだ。