2011年は東日本大震災、円高、ユーロ危機、タイの大洪水と、日本にとっては内外ともに災厄多き年だった。12年はそれ以上に不確実性、不安定性が高まる年となりそうだ、何しろ世界は政治の季節に突入する。1月の台湾総統選に始まり、露、仏、米、韓では大統領選、中国でも政権交代が行われる。北朝鮮情勢も不安材料だ。そうした状況下、12年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々に、アンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。第11回は、ネットイヤーグループ石黒不二代社長である。

①クラウドの活用が盛んに
グローバルプラットフォームを持つ企業とそれ以外の差が開く

いしぐろ・ふじよ/ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO。スタンフォード大学にてMBA取得後、シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立し、日米間の技術移転等に従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、ウェブを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。著書に『言われた仕事はやるな!』(朝日新聞出版)がある。

 一般的に言って、日本は新しい技術の導入に消極的だが、クラウドも同様。セキュリティー面においてもクラウドがむしろ強いと印象付けたのは皮肉にも1年前の大震災だった。2011年は、パブリッククラウドへの移行の年となったが、2012年はさらに一般化。グローバルプラットフォームを提供するGoogle、Amazon、Salesforceなどの企業価値はますます高まる。

②ソーシャルCRMが本格始動

 2011年は、大企業の半数近くがFacebookファンページやTwitter公式アカウントなどソーシャルメディアマーケティングの足固めを開始した歴史的な年。2012年は、ソーシャルリスニング、ソーシャルカスタマーサポートなど、ソーシャルCRMの本格的取り組みが始まる。

③音声コミュニケーションが復活

 2011年に登場したSiriにより音声認識技術が商用化の波に乗る。Siri以外にも同様な技術が紹介され、音から文字に回帰していたコミュニケーションは、再び音声がパワーを持つ時代に。

④内向き思考からの脱却

 少子化・内向き・草食系など、ここ数年騒がれた若者の内向き思考だが、成長のためには限界があると気づき、歯止めがかかる。女性の活用が進み、共働きはますます増える。グローバルでなければ未来はないと気づき、留学も増えるだろう。

⑤「理系」に幸せの兆し

 製造業を中心として、さらなる空洞化がすすむが、政府も成長への舵取りを行い、実効法人税率も低下、知的新産業が創出される。IT・ヘルスケア・エネルギーなど新分野では、ソーシャルゲームのプログラマーのように、技術者が認められ、理系に幸福が訪れる時代に。