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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第14回】 2012年1月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

橋下市長個人にではなく
〈橋下的なもの〉に感じる違和感。
本当に必要なのは
リダンダンシーのある社会ではないか

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なぜ私が橋下さんを批判するのか

 橋下さんはツイッターで、自らの方針を批判する学者や識者を攻撃しています。

 学者や識者と呼ばれる、直接の執行者ではない人が、時の為政者や体制に自らの専門的な立場や経験に基づいて批判的な意見を言うのは、いつの時代においても重要なことと考えます。それは決して、橋下市長への個人攻撃ではありません。

 その意味でも、“橋下現象”あるいは橋下さんの政治姿勢に対して懸念を表明してきた浜矩子さんや内田樹さんや高村薫さんといった方々に、橋下さんが感情的とも思える批判をぶつけることに違和感を覚えています。

 かく言う私も、橋下さんの府知事時代の言動などに対して批判的な考えを明確にしてきました。どの政策や言動に対しての批判かをここでひとつひとつ取り上げることはしませんが、私が懸念を感じるのは以下の点です。

 「物事を何でも極端に白黒にわけて、黒はダメと一刀両断に切り捨ててしまう」
「自分に対する反対意見を徹底的に論破して否定し、多様性を認めようとしない」

 一方で、世間では「スピード感がある」「はっきりしている」という肯定的な評価もあります。しかし、切り捨てられる側のことを考えると、私としては、明瞭さやスピード感を素直に評価することはできません。

 現代社会では、これほど〈橋下的なもの〉が支持される。あるいはその「風」に乗って、橋下さんがさらに〈橋下的なもの〉を尖鋭化させていくのではないか。私は、その「現象」に危惧を覚えているのです。

 精神科医は本来、目の前の患者さんを診断し、治療するのが主な役目です。しかしもう一つ、患者さんが接する社会全体あるいはそこで傑出した存在となっている権力者や政治家について分析するのも精神医学の一つ役割であり、これまで内外の多くの精神医学者が取り組んできました。これは、社会精神病理学、歴史精神医学などと呼ばれています。

 つまり、私は精神科医として〈橋下的なもの〉の象徴としての橋下さんや彼を熱狂的に支持する人たちを分析し、その発言や行動に社会病理性を感じ、歴史との比較なども行いながら、警鐘を発したいと考えているのです。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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