人を動かす基本は、人に好かれること。ビジネスパーソンにとっていちばん大事なのは、MBAの知識よりも人づきあいのスキル。人間の深層心理を平易にユーモラスに解説する書籍で多くのファンを持つ著者が、相手から信頼され、好かれるための人づきあいの方法を5回にわたって紹介する。

人づきあいのスキルはビジネスパーソンの土台

 ビジネスパーソンが身につけておくべきスキルとして、「英語」「IT」「会計」が重要だとよく言われます。

 たしかに、いまの市場を考えると英語やITは必要でしょう。また、会計が分かれば、仕事を違った面から見つめることができます。

 しかし、ビジネスパーソンにとってもっと大切なスキルは、「人づきあいのスキル」だと私は思います。

 初対面の相手といかにして仲良くなれるか。また、いかにして相手から
 「わかりました。やってみましょう」
  という言葉を引き出せるか。

 そうした良好な人間関係を築き上げるスキルが土台にあってこそ、英語力も会計知識も自分の能力として発揮することができます。

 仕事とは、人と人とが協力しあいながらするもの、人と人との間に生まれるものです。あなたが叶えたい夢や目標も、多くの人たちの協力や支援があればこそ、現実に近づけることができます。

 そう考えると、ビジネスパーソンにとってまず鍛えるべきは、人づきあいのスキルといえます。

 いくら仕事が数字で管理されようが、人間はロボットではありません。感情というものがある以上、好きな人や尊敬できる人の言葉や行動に影響されるものです。

 そして同じ仕事をするなら、嫌いな人よりも、好きな人や気の合う人と数多くしたいと思うのも人間の心理です。

 だからこそ、人づきあいのスキルを磨くことは、仕事の成果を上げるだけでなく、あなたの可能性を大きく広げる力にもなるのです。

渋谷昌三(しぶや・しょうぞう) 1946年、神奈川県生まれ。学習院大学文学部卒業、東京都立大学大学院博士課程修了。 心理学専攻、文学博士。山梨医科大学教授を経て、現在、目白大学大学院心理学研究科及び社会情報学科教授。非言語コミュニケーションを基礎とした「空間行動学」という新しい研究領域を開拓し、その研究成果をもとに、現代人に潜む深層心理を平易にユーモラスに解説した書籍で多くのファンを持つ。主な著書に『外見だけで人を判断する技術』(PHP研究所)、『手にとるように心理学がわかる本』(かんき出版)、『好感度200%UPの話し方』(ぶんか社)など。