社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を、本書から編集・抜粋して紹介します。

目標を持つことの「デメリット」
前回、目標を持つことのメリットについて書きました。目標に向かって頑張ることは素晴らしいことです。しかし、メリットの裏には必ずデメリットが存在するのも事実です。そして、目標を持つことのデメリットについて書かれているものはそんなに多くないかもしれません。いくつか挙げてみましょう。
デメリット1│将来、生まれるものへの可能性を見逃す
私たちは、自分が知っているものからしかやりたいことを考えられません。存在を知らないものに興味を持ったり目標を立てたりすることは不可能です。
例えば、小学生のとき、「医者になりたい」という目標を立てたとします。医者は素晴らしい職業ですが、その小学生が知らない、あるいは現段階ではこの世に存在していない職業の中に、より強みや興味に適したものがあるかもしれません。
また、成長するにしたがって、自分自身に想像もしていなかった強みや興味が芽生えてくるかもしれません。しかし、早くから「医者」という目標を決めることで、他の可能性を探る機会を逃す場合があります。
デメリット2│未熟な今の自分が、未来を狭くする
若いうちや経験が浅い段階では、本心が求めていることを自分には実現不可能だと思い込んでしまいがちです。そのため、そうした本当の気持ちを封じて現実的で手の届く目標を設定してしまうことがあります。
もしも、アイドルに憧れ自分もやってみたいと内心思っていても、自分の容姿に自信が持てなければ、可能性は1ミリもないと思い込み、全く違う夢を探すでしょう。今の自分だけを見て実現不可能と考え、より現実的な目標を立ててしまうのです。
しかし、人は成長し、時代が求めるものも変わっていきます。そして、人をサポートするツールも開発され、進化していきます。
さらに今日では、十数年前にはありえなかった顔を出さない素性不明のアーティストも出てきました。実現不可能に思えたことも、ツールが進化し、時代が変化すれば実現できる可能性が出てきます。
デメリット3│間接的に役立つ情報が入りづらくなる
目標に向かって邁進していると、それ以外の情報を見落としてしまいがちです。しかし、一見無関係に見える情報が、新たな可能性を開く鍵になることがあります。
実際のプログラマーの仕事では、ユーザーインターフェースの設計やユーザー心理の理解が重要になることも多く、それらの知識が後から大きな武器になる可能性があります。
デメリット4│社会の変化への対応が遅れる
固定的な目標にこだわりすぎると、急速に変化する社会や産業の動向についていけなくなる可能性があります。
固定的な目標にこだわりすぎて視野が狭くなり、社会や業界の変化への対応が遅れてしまうと、結果として自分のキャリアや可能性を狭めてしまう危険性があります。
デメリット5│「やるべきこと」に縛られ、自分らしさを失う
目標達成のためにやるべきことを優先すると、本当の自分の気持ちや興味を無視せざるを得ないことがあります。
その結果、自分らしさを失ってしまう危険性があります。
このように、目標達成のためにやるべきことを優先しすぎると、本来の自分の興味や価値観、生活の質を犠牲にしてしまう危険性があります。
*本記事は、しずかみちこ著『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。