「やる気はあるのに、なぜか続かない」――そんな自分を責めて、ストレスを抱えていませんか?
勉強、仕事、筋トレ…やる気はあるのに先延ばしてしまう。多くの人が抱えるこの悩みに、心理学の視点から答えるのが、新刊『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』です。
著者は、モチベーションの研究を専門とする筑波大学人間系教授・外山美樹氏。本記事では、外山氏にインタビューを実施し、「先延ばしグセを解消し、決めたことをやり切るためのコツ」を心理学の知見をベースに教えてもらいました。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

行動に移しやすい計画の立て方
―― 「今日こそは、筋トレをしよう」なんて思っていても、気づけば1日が終わっていて、「またできなかった」と後悔することがあります。こんな自分を変えるために、何かいい方法はありませんか?
外山美樹(以下、外山):そんな人は、ぜひ目標や計画の立て方を工夫してみてください。
目標や計画の立て方ひとつで、実は行動のハードルを大きく下げることができます。
例えば、本書でも紹介している計画法の1つに「if-then形式の計画」があります。
これは、「もし○○という状況になったら、△△する」という形で、事前に具体的な行動の「実行条件」を決めておく計画法です。
この方法は、心理学では「実行意図(implementation intention)」と呼ばれています。

たとえば、「(もし)朝起きたら、10分間ストレッチをする」や「(もし)仕事が終わったら、すぐに机の上を片づける」といった具合です。
目標達成のために、「いつ・どこで・何をするか」をあらかじめ明確にしておくことで、状況が訪れたときに迷わず行動しやすくなる、という仕組みです。
実行意図を活用することで、行動のハードルが下がり、やる気に頼らずに自動的に実行できるようになるため、習慣づくりや先延ばしの防止にも効果的です。
シンプルだが、抜群の効果がある
―― この「if-then形式の計画」は、どんな状況で特に効果を発揮するんでしょうか?
外山:この方法は、「やる気はあるのに、なかなか行動に移せない人」に特に効果的です。
例えば、「レポートを書く」というような漠然とした目標では、多くの場合、先延ばししてしまいがちです。
しかし、「7月10日の午後3時に、自分の部屋でレポートを書く」といったように、いつ・どこで・何をするかを明確にしておくことで、行動に移しやすくなります。
【実行しづらい目標】
「レポートを書く」
↓
【実行しやすい目標】
「7/10の午後3時に、自分の部屋でレポートを書く」
心理学の研究でも、このように具体的な実行計画を立てた学生は、そうでない学生に比べて、レポートの提出率が2倍以上高かったという結果が出ています。
つまり、やるべきことが明確なのに先延ばししてしまうような場面で、if-then形式の計画はとても有効になってきます。
行動を「自動化」するトリガーの力
―― なぜ「if-then形式の計画法」が、そんなにも行動の後押しになるのでしょうか?
外山:人は、計画が曖昧なままだと「いつ・どこで・どうやって行動するか」をその場で都度判断する必要があり、意志の力(自制心)に頼らざるを得なくなります。
しかし、意志の力は有限であり、疲れていたり気分が乗らないときには、行動に移すのが難しくなってしまいます。
その点、if-then形式の計画では、「○○のときに△△をする」という行動の「トリガー(引き金)」があらかじめ明確にされているため、状況が訪れたときにほぼ自動的に行動を起こすことができます。
これは、無意識的な情報処理が働くことで、意思決定の負担が減るためです。
このように、限られた自制心のリソースを消耗せずに行動できるため、目標達成の効率が大きく高まるのです。
だからこそ、if-then形式の計画は、シンプルながら非常に効果的な行動戦略です。