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逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

其の8「李下に冠を正さず」(古楽府「君子行」)
カネ、女……誘惑に負けそうになったとき

江上 剛 [作家]
【第8回】 2012年1月31日
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 経済産業省のエリート官僚がインサイダー取引の疑いで逮捕された。この人、みせかけのエリートじゃなくて、本物。元審議官で次官の呼び声も高かったという。

 でも馬鹿なことをしたものだ。どれだけインサイダー取引で利益を得たか知らないが、今までの功績もなにもかもぶっ飛んでしまった。しかも、容疑を否認し、「妻の指示で株を買った」と「妻が、妻が」と連呼している。どこか品のない政治家が「秘書が、秘書が」と言うのと似ていて、なんとも見苦しい。

 このインサイダー取引とは、「内部者が、会社の重要事実を公表より前に知って会社の株式を売買すること」。簡単に言えば、会社の機密情報を知りえる立場の人が、それを知って他の人より有利な条件で株取引をすることだが、そんなことをすれば市場の公平性、信頼性を阻害してしまうから禁止してあるのだ。

 この規制は、1988年の証券取引法改正によって導入されたのだが、それまではやり放題だった。株取引は、他人より早く会社の機密情報を入手し、上手く売買することだとさえ思われていたくらいだ。この元審議官も、インサイダー取引で大儲けする先輩官僚を見習い、早くから株取引に手を染めていたのだろう。

 さてこの事例は、典型的な「李下に冠を正さず」という故事の通りの事件だ。たわわに実ったスモモの下で冠を直したりすれば、盗んだと思われることから、疑われるようなことを最初から慎むべきという教えだ。

人事院での出来事

 私は、この故事をある場所で使った。それは人事院でのことだ。ある日、人事院から公務員の倫理について検討会をしますので、出席して欲しいと言われた。

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江上 剛 [作家]

えがみ ごう/1954年1月7日兵庫県生まれ。本名小畠晴喜(こはた はるき)。77年3月早稲田大学政経学部卒業。同年4月旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。高田馬場、築地などの支店長を歴任後、2003年3月同行退行。1997年に起きた第一勧銀総会屋利益供与事件では、広報部次長として混乱収拾に尽力する。『呪縛 金融腐蝕列島』(高杉良作・角川書店)の小説やそれを原作とする映画のモデルとなる。2002年『非情銀行』(新潮社)で作家デビュー。以後、作家に専念するも10年7月日本振興銀行の社長に就任し、本邦初のペイオフを適用される。


逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

作家・江上剛氏は、その人生で2回も当局による強制捜査を経験した。その逆境にあって、心を支えくれたのが、「聖書」「論語」「孫子」などの古典の言葉である。ビジネス界に身を置けば、さまざまな逆風にされされることも多い。どんな逆境にあっても、明るく前向きに生きる江上剛氏が、柔術ならぬ“剛術”で古典を読み解き、勇気と元気の“素”を贈る。

「逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―」

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