働き方改革・生産性向上に直結する「健康経営」とは何か

日本企業の喫緊の課題として、生産性向上、それを実現するための働き方改革への取り組みがさまざまな形で進められている。なかでも、「健康経営」は働き方改革のベースともなる経営戦略だとして、経済産業省が「健康経営銘柄」「健康経営優良法人」といった顕彰制度を開始するなど、その推進に力を入れ始めた。ここで言われている「健康経営」とは、従業員の健康管理といった側面だけではなく、企業成長につながる、経営視点で行うべきものであるという。まさに“国を挙げて”取り組みが始まった「健康経営」の本質とはなにか。経済産業省ヘルスケア産業課長の西川和見氏に聞いた。

健康経営は「コスト」ではなく「投資」

――“従業員の健康”というと、健康診断や健康管理といったイメージを抱きがちですが、今、経済産業省が推進している「健康経営」は同じ“従業員の健康”を考えるにしても、経営視点であることがキーになっています。

働き方改革・生産性向上に直結する「健康経営」とは何か経済産業省
西川和見 ヘルスケア産業課長

西川 そうですね。まず今の日本と企業が抱えている問題から考える必要があります。 マクロ的な側面から言うと、日本経済全体として、超高齢化社会にどう取り組むか、という課題がありますが、健康な人が増え、例えば65歳で一律に引退する必要がなくなれば、労働生産力の増加が期待できます。また、介護離職される人が年間10万人くらいいますが、高齢者が元気でいることでそれを支える現役世代もしっかり働くことができます。だから今、健康に投資することが重要になっているんです。

 それだけでなく、今の安倍政権の成長戦略で最も言われているのは「生産性をいかに上げるか」ということです。だから働き方改革を推進しているわけですが、みんなが健康であればいい、ということだけではなく、健康に投資することによって従業員のみなさんの生産性と活力を上げるところが狙いになっています。

 ミクロ的な側面では、生産性向上の観点、イノベーションを起こす環境・組織づくりといった経営戦略的な観点から従業員の健康管理、健康維持が重要になります。

 ここでポイントとなるのは、コストとしてでなくて「投資」として取り組むこと。そのためにも、企業経営者は企業理念に掲げ、その理念に基づく体制を作り、その体制に基づくアクションを取り、PDCAを回し、法令を守りながらしっかりやっていくということが大事になりますが、何よりもコストではなく投資として意識を持ってやっていくということが一番重要なことです。

 そして、従業員の健康と生産性を同時に管理するこうした経営は英語で言うと“ヘルス・アンド・プロダクティビティ・マネジメント(Health and Productivity Management)”と言いますが、ヘルス(健康)に投資をした結果、プロダクティビティ(生産性)が上がらないといけない。ここが健康経営に取り組む意味、本質だと思っています。