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子どもを預けられない母親は本当に減っているか?
統計に隠れた「潜在的待機児童」の行き先

小川 たまか
【第62回】 2012年2月7日
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 2万5000人もの児童が保育所に入れないという、深刻な待機児童問題が取り沙汰されたのは2009年。当時、経済協力開発機構(OECD)が「子ども手当よりも待機児童の解消に力を注ぐべきだ」という提言を行ったほどだった。それから2年、昨年10月の厚生労働省が行った発表によれば、4年ぶりに待機児童は減少した(2万5556人、前年比-719人)。これは、保育所定員数が2010年からの1年間で約4万6000人増加したことが理由だ。

 しかし、定員数の大幅な増加にもかかわらず待機児童の減少数が少ないことは明らか。これには、そもそも待機することすら諦めている「潜在的な待機児童」が統計に表れていないことを意味する。そうしたなか、ベネッセが1月30日に発表した『2009年~2011年 首都圏“待機児童”レポート」』では、「保育園の在籍児童数は年々増加し、子どもを預けたいニーズは高まり続けている」という分析結果が明らかになった。

 調査は、2009年~2011年の各年、4月入園に向けて、首都圏の認可保育園に入園申請をした母親を対象。有効回答数は2009年から順に720人、836人、967人。調査地域は東京・神奈川・埼玉・千葉。

※待機児童数は都市部に偏る傾向があり、2011年4月の段階で最も待機児童が多いのは東京(7855人)。神奈川(3095人)、沖縄(2295人)、大阪(1710人)、千葉(1432人)、愛知(1422人)が続く。青待機児童数がゼロなのは青森、富山など9県(厚生労働省発表による)。

追いつかない保育所の増設
認可外保育所の満足度も高まる

 2009年に待機児童数が急増した背景には(2007年=1万7926人、2008年=1万9550人、2009年=2万5384人)、リーマンショックなどによる景気の冷え込みがある。共働き世帯の増加によって、保育園の需要が拡大。これに対応するように、認可保育所は公立・私立合わせて2009年から2011年までに460ヵ所が増設された。認可外保育施設の総数も、2010年から2011年にかけて116ヵ所増えるなど、増設が続いている。

 しかし、認可保育園の増設が続く一方で、その利用率は認可外保育所に比べてむしろ減っている現状がベネッセの調査からはわかる。2009年に認可保育所園を利用した入園申請者は47.2%だったのに対し、2011年は37.5%。認可保育園以外の預け先(自治体の助成を受けている認可保育園、その他の認可外保育施設、幼稚園)は約16%増えている。このことから、認可保育園の増設では間に合わない“潜在的待機児童”の増加を補っているのが認可外保育所であることが考えられる。

 さらに、3月以前の保育サービス利用状況として、認可外保育所や幼稚園などを挙げた人は全体の半数以上に上る51.7%で、2009年の22%と比べ増加している。認可保育所に比べて「高い」「保育の質が悪い」と敬遠されてきた認可外保育所だが、認可に入れない児童への「緊急避難所」的側面があることは間違いない。また、認可外保育所への認知度の高まりとともに受け入れられつつあるとも言えるだろう。

 預け先別に母親たちの満足度を聞いたところ、「とても満足している」「まあ満足している」と答えた人は、認可保育園で95.4%、認可外保育所で91.4%だった。

預け先が見つからない母親の
約半数が「仕事、再就職」を断念

 2011年に調査を行った967人のうち、4月までに預け先が見つからなかった母親は、約3割にあたる324人。このうち、58.6%が、「仕事、または再就職するのをやめ、自分で子どもの世話をすることにした」と答えている。「自分または配偶者の育児休業を延長し、子どもの世話をすることにした」と答えた人も24.1%となった。

 2010年版「男女共同参画白書」によれば、高等教育を受けた日本女性の就業率は66.1%で、OECD加盟国の30ヵ国中29位(最下位は61.2%の韓国)。白書では、結婚や子育てに伴う退職を減らすことで、最大で445万人の労働力増加につながるとも発表されている。

 待機児童数は減っても、子育て中のすべての女性が不安なく職場に戻れる環境にはほど遠い。多くの人が子育て中に「働き盛り」と言って良い時期を迎えるが、この時期を無駄にしないためにも、子どもの教育に対する国の補助は非常に重要だ。子どもの教育と親の就労が密接に結びついた待機児童問題への関心が、今後さらに高まることを願ってやまない。

(プレスラボ 小川たまか)

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