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福岡伸一教授が語るエピジェネティクス入門
【第2回】 2012年2月14日
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福岡伸一 [青山学院大学教授]

【第2回】遺伝で重要なのはお父さんよりもお母さん?
サルを人に変えるエピジェネティクスが解き明かす
遺伝の不思議

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福岡伸一教授に聞くエピジェネティクス入門第2回目。親から子にDNA以外に遺伝するものとは何か、親の才能は子どもに遺伝するのか、サルと人を分けるものは何か、知られざる遺伝の秘密が明かされます。

遺伝で重要なのはお父さんよりもお母さん

――エピジェネティクスによって何がわかるのでしょうか。

青山学院大学 教授・生物学者 福岡伸一氏

 遺伝子がオンになるタイミングやボリュームはどうやって決まるのかについて、色々なことがわかってきています。親から子に手渡されるのはDNAで、DNAはいったんリセットされて新しい生命体ができます。でも虚心坦懐に生殖の仕組みを見ると、親から子に受け渡されるのはDNAだけじゃなくて、受精卵という形で子どもができています。

 受精卵はとても大きな細胞で、お父さんのDNAとお母さんのDNAが合体してできた新しい遺伝子をその中に持っていますが、同時に受精卵の細胞質というか、DNAを取り囲んでいる細胞環境自体も親から子に、特にお母さんから子供に受け渡されます。

 その中に、DNAだけじゃなく、DNAをどういう風に働かせるかという色々な装置もあって、一緒に受け渡されているんです。マターナルRNAというものがあって、マターナルって「母の」motherの形容詞ですけれども、受精卵の中にお母さんが作り出したRNAがいくつか入っています。それはタンパク質の設計図なのですが、お父さんとお母さんから由来するDNAとは別に、あらかじめRNAが存在していて、それが遺伝子を動かす順番を決めていることがだんだんわかってきました。まさに遺伝子の外側にあるエピジェネティクスな仕組みの一つですね。

 またDNAもただの遺伝暗号だと考えられていましたが、それだけじゃなくて、DNAにはさまざまな化学的な修飾、つまり印がつけられています。それはメチル化やアセチル化と言われていますが、文字でいうと小さな傍点のようなものですね。括弧とか傍点のように、テキストそのものではないんですが、そのテキストをどう読めばいいかということが、小さな化学物質の変化としてDNA上に書かれています。

 その化学的な装飾は、親の遺伝子に書かれていれば子どもにも同じように書かれるというように、遺伝するものであることがわかってきて、それもエピジェネティクスの新しい仕組みとして注目されています。

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福岡伸一 [青山学院大学教授]

生物学者。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2007年に発表した『生物と無生物の間』(講談社現代新書)は、サントリー学芸賞および中央公論新書大賞を受賞し、ベストセラーになる。他に『ロハスの思考』(ソトコト新書)、『できそこないの男たち』(光文社新書)、『動的平衡』(木楽社)、『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書)、『ルリボシカミキリの青』(文藝春秋)、『動的平衡2』(木楽社)など著書多数。


福岡伸一教授が語るエピジェネティクス入門

「生命とは何か」を追い求める生物学者であり、『生物と無生物の間』や『動的平衡』などのベストセラー作家でもある福岡伸一教授に、今、生物学で最も注目されているエピジェネティクスについて伺った。旧来の遺伝学とは違う、新しいエピジェネティクスとはどういうものなのか。遺伝子以外のものも遺伝するという遺伝の不思議、サルと人を分ける遺伝子の働きの秘密等、そのポイントを全3回でやさしく解説します。

「福岡伸一教授が語るエピジェネティクス入門」

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