遺伝的に糖尿病になりやすい人の特徴と発症を防ぐ“たった1つの対処法”とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

糖尿病大国・日本において、予備軍も含めた国内の患者数は約2000万人にものぼる。1型糖尿病は遺伝病としてよく知られているが、生活習慣病だと思われている2型糖尿病も、実は遺伝の影響を大きく受けているという。では、遺伝的に糖尿病になりやすい人は、どう対処すればいいのだろうか。ヒトの健康や寿命に大きな影響をもたらす「遺伝」について、専門家が詳しく解説する。※本稿は、樋口 満『健康寿命と身体の科学 老化を防ぐ、50歳からの「運動・食事・習慣」』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

飢餓に備えて祖先が獲得した
「倹約遺伝子」がアダとなる

 数百万年前に地球上に人類の祖先が誕生したのち、長い年月を経て約6万年前、現在の私たちの祖先がアフリカの地から地球全体に広がっていきました。そして、地球上のさまざまな地域の環境条件に適応しながら、現在まで生きながらえています。

 寒冷や高温多湿、あるいは食糧の不足などのさまざまな環境条件に適応するということは、身体の形質や機能を、生存に適するように改変することに等しいです。そして、生活する環境条件に適応するために、私たちの祖先は遺伝子配列を少しずつ変えながら、今日に至っているのです。

 現在の私たちが祖先から受け継いだ典型的な機能のひとつが、食糧が不足している条件でも、できるだけエネルギーをからだに蓄えておく能力です。

 現在の私たちの生活からは想像しがたいですが、食糧入手の手段を狩猟・採集に頼ってきた私たち人類の祖先は、それぞれの時代において、特権的地位にあった一部の人たちを除けば、常に食糧の入手が困難な状況にさらされてきました。その一方で、生存のためにさまざまな肉体的労作に耐えられるようにもなってきました。

 それは農耕・牧畜などによる食糧生産の増加が可能になってからも、それほど変わってきませんでした。