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福岡伸一教授が語るエピジェネティクス入門
【第3回】 2012年2月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
福岡伸一 [青山学院大学教授]

【最終回】あまりに多すぎてコントロールできない
遺伝子操作の限界はどこにあるのか

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人は氏か育ちか? 病気になりにくい遺伝子を作ることはできるのか? 遺伝子はタレント名鑑みたいなものである? 福岡伸一教授の説くエピジェネティクスワールド最終回。

「氏か育ちか」論争に決着をつける

――遺伝子をコントロールすることは可能でしょうか

青山学院大学 教授・生物学者 福岡伸一氏

 人間のタイムスパンでコントロールできることじゃないと思うんですね。エピジェネティクスがわかるほど、より遺伝子操作が簡単になるとは思えないです。今の遺伝子組み換えは、Aという遺伝子を別のA’にすげ替えれば、そこの歯車が大きくなるので、速く回って細胞全体の生産量が上がりますという機械論的な考え方に基づいています。

 けれど、エピジェネティクスのことがわかればわかるほど、単純なすげ替えでは思ったような効果は出なくなるんじゃないでしょうか。遺伝子がどういうタイミングで、いつ働くかを支配しているエピジェネティクスな要素はものすごく多くて、それを全部コントロールしないと遺伝子操作はうまくいきません。全部コントロールするのは、ある意味不可能なことなので、思っていたほど遺伝子は簡単じゃないということが、ますます明らかになっていく気がします。

 これまで「氏か育ちか」のように、遺伝子が決めていることと環境が決めていること、寄与率はそれぞれどれぐらいかという永遠の生物学の問いかけがあって、結局はどちらも同じぐらいということになっていました。その境界線がますますわかりにくくなっていくと思うんです。

 犬もそうなんですけれど、犬ってセントバーナードからチワワまでものすごいバリエーションがありますよね。でも生物学的には一種です。種は交配が可能であれば同じ種と考えることができるんです。犬は、現実的にはなかなか難しいかもしれませんが、チワワとセントバーナードを交配して子犬を作ることはできるので、同じ犬という種なわけです。

 でも犬がこれだけバリエーションを持つようになったのは、ここ数百年ぐらいのことじゃないでしょうか。このバリエーションがすべて遺伝子上に起こった突然変異なのかというと、違うと思うんです。突然変異で変わったこともあるとは思います。でも犬がこれだけバリエーションを持って、色々な品種が作り出されたのは、エピジェネティクスなものの結果でしょう。

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    福岡伸一 [青山学院大学教授]

    生物学者。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2007年に発表した『生物と無生物の間』(講談社現代新書)は、サントリー学芸賞および中央公論新書大賞を受賞し、ベストセラーになる。他に『ロハスの思考』(ソトコト新書)、『できそこないの男たち』(光文社新書)、『動的平衡』(木楽社)、『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書)、『ルリボシカミキリの青』(文藝春秋)、『動的平衡2』(木楽社)など著書多数。


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    「生命とは何か」を追い求める生物学者であり、『生物と無生物の間』や『動的平衡』などのベストセラー作家でもある福岡伸一教授に、今、生物学で最も注目されているエピジェネティクスについて伺った。旧来の遺伝学とは違う、新しいエピジェネティクスとはどういうものなのか。遺伝子以外のものも遺伝するという遺伝の不思議、サルと人を分ける遺伝子の働きの秘密等、そのポイントを全3回でやさしく解説します。

    「福岡伸一教授が語るエピジェネティクス入門」

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