感情と理性を管理するのも
ファシリテーターの役割

──2つ目の「場をコントロールする」と、3つ目の「触発する、噛み合わせる」については如何ですか?

「場をコントロールする」とは、参加者が前向きに話し合えるような生産的な場を維持するということです。個人攻撃をしたり、相手の発言を批判したりすると、感情的な対立が起こることもあります。あるいは、空気を読む状態が続いたり、誰かの意向を忖度するというのも議論の質を下げることになります。そうした様々な状況をコントロールして、シナリオがうまく機能するように働きかけることを指します。

ファシリテーターに求められる「4つのスキル」とは?

 次の「触発する、噛み合わせる」は、参加者へ示唆に富む問いかけをしたり、参加者同士の意見を噛み合わせたりして、論理的な思考を引き出すということです。そのためにファシリテーターは、錯綜する問題を明解に捉え、解決へのプロセスを提案する必要があります。

 今述べた2つのスキルは、言わば人間の「感情」と「理性」にどう対処するかという能力です。人は感情のほうが理性よりも遙かに大きなエネルギーを持っているので、放っておくと感情に左右されて理性的な議論が難しくなります。それを防ぐために場をコントロールする。そのうえで、理性的な議論が活発になるように、触発したり、噛み合わせたりするわけです。

フレームワークの
役割と限界

──ファシリテーションの現場では、たびたびフレームワークが活用されます。前回お話し頂いたプロセスマッピングもその一つですが、こういうものを使って論理的な枠組みにしたがって論点を整理していくことで、よりよい解決策を引き出すことができるわけですね?

 その通りです。論点を整理したり、一歩下がって議論全体を俯瞰してもらうのにフレームワークは大変役に立ちます。ただ、フレームワーク信仰のようなものがあるのが少し気になっています。フレームワークは、道具であって思考を代替してくれるものではないからです。

 最近、人の認知に関するバイアスの研究が進んでいますが、その中で明らかになってきているアンカリングやフレーミングという現象は、ファシリテーションをするうえで非常に重要です。

 アンカリングは、錨をおろすことからきている言葉ですが、人はある発想をするとそこからなかなか離れられなくなるという現象のことです。フレーミングは、同じ問いでも、どういうフレーム(あるいはアンカー)の中でそれを問うかで答えがまったく変わってしまうということです。