最近、対人関係の問題などで心を病む人が増えています。会社は多くの人が集まる場所。そこには、上司や先輩、同僚、部下や取引先など、多くの人間関係が生じます。それらの関係は、いずれもストレス要因になり得ます。職場のストレスをなくし、働きやすい環境をつくるのは現場を預かるリーダーの仕事のうち。本連載では、『部下をもつ人の職場の人間関係』を上梓した対人関係療法の第一人者で精神科医の水島広子氏が、職場のストレスをなくし、円滑な人間関係をつくるコミュニケーションのコツをアドバイス。第5回は、リーダーの役割はファシリテーターということついて説明します。

リーダーは、上手なファシリテーターになろう

上手なファシリテーターになるためのコツ

 リーダーの役割はファシリテーター(促進役)、ということを第2回の連載でお話ししました。

 ファシリテーターとは、会議の場などで参加者から意見を引き出したり、出た意見をもんだりして、議論を促していく進行役のことです。

 管理職やリーダーがやるべきことは、「立場が上である自分」の意見に従わせるのではなく、それぞれのメンバーが持っている才能や可能性を最大限に引き出して成果に結びつける、ということです。

 しかし、すべての人が、ただ任せて放置しておけば自分の可能性を最大限に発揮して働いてくれるわけではありません。そこでリーダーや管理職に求められる役割が、ファシリテーターというわけです。

「機能するリーダー」とは、上手なファシリテーターであるということです。

 上手なファシリテーターになるためには、次のような点に配慮する必要があります。

1.相手を変えようとせず、変わりやすい環境をつくる
2.アドバイスは避け、教育(専門的助言)をする
3.ジャッジメントを手放して上手に注意をする
4.一対一の話し合いが適する場合と、グループでの話し合いが適する場合を区別する
5.職場の基準をつくる
6.必要なプロセスは見守る

 以下では、この6つの点について、ポイントをお話ししていきます。