「注文を取るな、我々が迷惑する」取引先が激おこ→経営の神様の「返し」が流石すぎた!Photo:JIJI

自分の組織や自分自身の力を最大限に引き出すには、何をすればよいのか。「経営の神様」稲盛和夫氏が創業時、取引先に「納期通りにつくってこない」と叱られた時に言い返した言葉に、成功するために必要な信念が詰まっていた。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「やれるだけやれ」では人は努力しない!

 持てる力を最大限に引き出すための考え方として、ストレッチゴール理論がある。達成できるかどうか分からないような高い目標をあえて立てることで、組織全体の力を引き出し、結果として大きな成果につなげるという考え方である。

 例えば、ソフトバンク創業者の孫正義氏は、時に「大ボラ」とも言われるような、現実離れした目標を掲げることを好む。少し無理をするような目標が、実際の経営の中でも新しい可能性を切り開いていく場面は少なくない。

 エドウィン・A・ロックとゲイリー・P・レイサムによって提唱された理論(『目標設定と課題動機づけの実用的理論の構築』2002年)は、35年に及ぶ膨大な実証研究を土台としている。

 この理論の最も重要な発見は、「あいまいで簡単な目標」よりも、「具体的で難易度の高い目標」を設定した方が、より高い成果を生むという点にある。

 実験やフィールド調査の結果、難易度の高い目標を与えられた人々は、そうでない人々に比べて、より多くの努力を払い、より優れたパフォーマンスを発揮する傾向が明確に観察された。また、統計解析によって「高い目標ほど高い成果を生む」と言えることもわかっている。 

 特に論文で示唆に富むのは「やれるだけやれ」という一般的な励ましでは、人は努力しないという指摘である。