クールジャパン戦略の主軸にもなっている日本のアニメやマンガ。中国人の中にも、小さい頃から日本のアニメに親しんできたという人は多く、オタクを意味する「宅女」「宅男」という言葉も浸透している。ただし、日本在住10目、オタク歴15年の中国人留学生によれば、日中間のオタクには違いがあるという。(清談社 金城陽子)
病弱だった少女を励ました
『カードキャプターさくら』
現在、都内にある国立大学の博士課程で学ぶ重慶出身の鄭さん(29歳、女性)は、日本在住10年目。自らを“筋金入りのオタク”だといい、来日する前から日本のアニメに親しんできた。
「最初に好きになったのは、高校生のときに見た『カードキャプターさくら』。さくらちゃんが素晴らしいのは、回を重ねるたびに変身シーンの衣装が変わるところ。キャラクターの性格もポジティブで可愛くって、もう一瞬で落ちてしまいました」
青春期の真っ只中、アニメにドハマリした鄭さんは、そこからさまざまな作品を観るようなり、自然と耳が日本語に慣れていった。簡単なセリフが理解できるようになり、むしろ不自然な中国語の字幕が出てくると、気になって仕方がなかったという。
ただ、アニメ鑑賞はあくまでも趣味の範疇で、もともと日本に留学する気はなかったそうだ。
「本当は中国の大学に進学する予定でした。しかし、当時は体が弱く、大きな手術をしたこともあって受験を断念してしまいました。それで、半分引きこもりのような状況なったのですが、外に出るきっかけになればと思ってツアーで日本に行ったら、日本人の添乗員に日本語を褒められて。『センスあるよ』って言われて、すぐその気になっちゃったんです(笑)」
この言葉がきっかけとなり、日本語教室で本格的に学び始めた鄭さん。その後、同じ教室で学んでいた学生が日本に進学するという話を聞いて競争心を煽られ、自分も留学することに決めたのだという。
「最初は2年で帰るつもりだったから、短大に入学しました。ただ、思いのほか成績が良かったことや教授の勧めもあって、四年制大学に編入、なんだかんだでそのまま研究を続けて、今は博士の3年目です」