日本の存在を無視した
欧米メーカーの強硬姿勢に場内緊迫

米カリフォルニア州サンディエゴで開催された、SAEのハイブリッド車、EVのシンポジウム会場入口。講演中、場内での撮影、録音は禁止。Photo by Kenji Momota

 事件は、2012年2月22日(水)、午後2時55分に起こった。現場は気温摂氏20度を超えたポカポカ陽気の米カリフォルニア州サンディエゴ。同地のタウン&カウンティーコンベンションセンターで開催された、米自動車技術会SAE・2012ハイブリッドヴィークル/エレクトリックヴィークルシンポジウム2日目の会場内だった。

 その日の午後は、独ボッシュ等のサプライヤー7社が講演。その後に、主催者のSAEインターナショナルのグランドヴィークルスタンダード・テクニカルプロジェクトのマネージャー、キース・ウイルソン氏が講演した。題目は、「SAE Standards to support Electro-Mobility」。電動車両の規格標準化に関するものだ。SAEにはアメリカで自動車を製造販売している世界各国の自動車メーカー、自動車部品メーカー、電気機器メーカーなどが参加しており、SAE規格はISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の規格に対して強い影響力を及ぼす。

 講演のなかでウイルソン氏は、SAEではハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EVなどの電動車関連の規格標準化活動の詳細を紹介した。それによると現在、24の関連部会が開催中で、そこに774人が参加。52の規格が承認済み、または審議中だとした。その審議中の規格として、非接触充電、スマートグリッド関連、さらに急速充電用の“SAEコンボコネクター”が紹介され、今年の第2四半期での承認を目指しているとした。製品についても今月中に量産型第一号が完成する予定だ、という。

 これに対して、現時点で世界で最も認知されている急速充電方式、日本が推奨するCHA de MO(チャデモ)については、同講演のパワーポイントファイル内に活字の表記も写真もなく、さらにウイルソン氏の口からも一度も「チャデモ」という言葉が出ることはなかった。

 講演中、筆者のふたつ前のテーブルに座った大柄のアメリカ人は終始、苛立っていた。後ろから見ていても、そのイライラの大きさがハッキリわかるほどだった。そして講演終了後の質疑応答時に、彼は最初に手を上げ、質問用に設置されたマイクの前に仁王立ちし、強い口調でこう質問した。「どうして、チャデモについて全く触れないのか!?」。