野村のトップ人事で試される<br />海外事業立て直しの舵取りHD経営に専念する渡部賢一CEO(左)と証券社長に昇格する永井浩二氏(右)

 3月6日、野村ホールディングス(HD)は、グループの中核証券会社である野村証券の社長に永井浩二副社長を、会長には多田斎副社長を据える人事を発表した。

 これまでグループCEO(最高経営責任者)として、HDと野村証券を束ねてきた渡部賢一氏とグループCOO(最高執行責任者)の柴田拓美氏は、共に野村証券の業務執行からはずれ、HDのCEOとCOO職に専任する。

 その理由は、2008年に旧リーマン・ブラザーズの欧州とアジア部門を買収し、海外事業が急拡大したことにある。

 ある野村幹部は、「リーマン買収まではHDと証券の仕事は9割方同じだったが、今や国内と海外の割合はほぼ半々。人員規模で見ても、国内1万5000人に対し、海外が1万3000人となっているため」と解説する。

 つまり、リーマンを買収したまではよかったが、欧州債務危機の勃発などで海外事業が大赤字に陥り、渡部氏と柴田氏はその立て直しを中心としたグループ経営の舵取りに専念するというわけだ。

 一方で国内は、三つの支店で支店長を歴任し、ホールセール(法人営業)部門でも実績を挙げ、「リテール(国内営業)とホールセールの両方で実績を挙げた数少ない人物」(野村幹部)と評される永井氏が、社長となる。

 加えて、これまた一貫してリテール部門を率い、苦境の野村を支えてきた多田氏が永井氏をサポートするかたちだ。

 過去3代にわたり管理畑出身者が社長を務めてきたが、営業出身者が社長となることで、国内強化の構えとなる。

 グローバル金融機関として名乗りを上げた野村としては、HDと野村証券の執行の分離は正しい姿かもしれない。だが、野村証券の中にも海外部門があるなど、「より複雑化するのではないか」(他の大手証券幹部)との指摘もある。

 今回の人事で複雑化した組織を束ね、海外事業を軌道に乗せられるのか。それが野村の課題である。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)

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