奪い合いの起こらない
新しい経済の仕組み

 ある大学の先生に聞いたのですが、人間というのは衣食住が足りると気前が良くなり、何かの価値の交換に通貨を介在させなくなるようです。これを「アバンダントエコノミー(豊かな経済)」というそうです。

 普通、労働の対価として報酬を得ようとします。ですが、豊かな状況にあると、「お金は、まあいいよ。どうぞ、どうぞ」と対価を要求することなく、価値を提供するそうなのです。そのため、奪い合いも起こらなくなるといいます。

 耳を疑うような話ですが、今回の生活を通じて、まさにそれを実感しました。仲間と助け合いながら暮らすことで、お金も必要とせずに済み、安心して暮らすことができたのです。

 これは田舎暮らしの良さに似ています。近所の人は顔見知りで、互いの物をシェアする習慣があり、何かあっても助け合おうとするところに安心感が生まれるのです。

 実際、小さな子どもを連れてきたお母さんがいたのですが、皆がその子の世話をするようになって、最後はお母さんも安心して任せているほどでした。

 ある夜、20代の女性たちから身の上話を聞きました。田舎から上京して一人暮らしをしている女性が「本当に寂しくて」と涙ぐんでいました。

 もともと人間というのは、社会的動物であり、「心理的な安全性」が必要だといわれます。いくら金銭的に豊かになっても、孤独や不安を抱えていては、安心して暮らせないのです。その点、都会より田舎の方がまだ交流があるような気がします。

 もちろん、田舎にも不便なところはあります。閉鎖的な環境やプライバシーのなさを嫌だと思う人もいるでしょう。

 ですが、僕たちは「Living Anywhere(リビングエニウェア)」という新しいライフスタイルを実現したいという共通の意思を持って集まりました。そのため、家族のような新しいコミュニティーができたのです。