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野口悠紀雄の「経済大転換論」

景気回復すれば国債が暴落するという悪夢

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第10回】 2012年3月15日
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 2000年に開始された量的緩和政策は、06年に停止された。日銀が保有する長期国債の残高も、04年をピークとして減少した。

 しかし、10年10月に、再び国債購入が開始された。

経済危機による
税収激減に対処

 2010年10月5日、日本銀行は「包括的な金融緩和政策」を決定した。

 この政策の眼目は、国債、CP(コマーシャル・ペーパー)、社債、ETF(上場投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)などの金融資産の買入れを行なうため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設したことである。

 基金買入れで保有する長期国債は、銀行券発行残高を上限に買入れる長期国債と区分のうえ、異なる取り扱いとするとした。

 それまであった日銀券ルールでは、購入限度額を恣意的に変えることはできない。しかし、基金の限度は恣意的に変えられる。このため、国債購入の自由度が拡大したわけだ。

 なぜ、このタイミングで新しい金融政策が取られたのだろうか?

 一般には、景気が回復しないからとか、デフレから脱却しないからなどと言われた。しかし、10年前半は、中国への輸出の回復で、09年の落ち込みからの回復が顕著になりつつある時期だった。マクロ経済はむしろ上向きに転じつつあったのである。

 政策が取られた理由は、マクロ経済ではなく、国債発行の急増だ。

 08年9月にリーマン危機が発生し、税収が激減した。これによって、国債の発行額が急増したのである。

 それまでは、毎年度30兆円台を超えることがなく、06、07年度には20兆円台にまで減少していた新規国債発行額が、09年度にはいきなり52兆円になった。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄の「経済大転換論」

日本経済は今、戦後もっとも大きな転換期にさしかかっている。日本の成長を支えてきた自動車業界や電機業界などの製造業の衰退は著しく、人口減や高齢化も進む。日本経済の前提が大きく崩れている今、日本経済はどう転換すべきなのだろうか。野口悠紀雄氏が解説する。

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