公務員は、勤続年数が基本給に直結する。この年功序列の給与制度に対して、批判や懐疑的な意見が飛び交って久しい。平成も30年になり、時代は移り変わる中、年功序列は今もなお公務員組織に根付いている。地方自治体もその例外ではない。
年功序列の給与制度を多角的な視点から検証すべく「年功序列を擁護する理由」、「年功序列が生む新たな課題」、そして、あまり知られていないことだが、全国の自治体で唯一、年功序列の給与制度を廃止した「箕面(みのお)市の事例」から、改革が進まない理由を明らかにする。
公務員の給与制度において、なぜ年功序列が維持されているのか。そして、この制度は果たして現状に見合う制度なのだろうか。地方自治体各所を取材する中で、制度を変革する際の課題点が見えてきた。
年功序列を擁護する理由
年功序列の給与制度を擁護する人たちは一定数存在するが、擁護派の主張を裏付ける理由は大きく2つある。「年次以外の評価ができない」「成果に偏向するあまり、不正を助長する」というものだ。この2つを順に検証したい。
まず、「年次以外の評価ができない」という理由について。自治体では水道や下水道事業などの一部の部署を除き、売り上げという概念が存在しない。そのため、評価の基準が曖昧になり、目標を具体化できず評価ができないということだ。
しかし、これは民間企業の評価制度を曲解した意見である。民間企業にも当然、管理部門や企画部門があり、チームで仕事を行うことのほうが多い。個人の業務が直接的に売り上げへ結びつく職種は、営業などのごく一部に限られる。一般的には全ての職種において目標や能力・成果を可視化する努力を行っている。