電波オークションの制度導入前にプラチナバンドの割り当てを決めてしまう総務省

「念願のプラチナバンドの認可を得ることができました。携帯事業で一番うれしい日となりました」

 ソフトバンクの孫正義社長は3月1日、記者会見でこう述べた。舞台袖にいた技術系トップの宮川潤一・ソフトバンクモバイル専務も涙ぐんでいた。

 それもそのはず。ソフトバンクの獲得したプラチナバンドとは、電波の中でも屋内に入りやすく、大人数が使えるため、つながりやすい。スマートフォンの普及でデータ通信量が急増するなか、各社はのどから手が出るほど欲しい、まさに「プラチナ」の名のつく価値の高い電波だったからだ。

 NTTドコモやKDDIと比べ、プラチナバンドを持っておらず、「つながりにくい」という経営課題を突きつけられてきたソフトバンクとすれば、まさに悲願達成だったのである。

 そもそも今回の一件は、国民の財産である電波の有効利用を狙うために、総務省が周波数再編策の一環として始めたものだ。

 ソフトバンクは応募した他の3社に比べ、プラチナバンドを持たず、既に持つ周波数帯に対し契約者の数が多いことが決め手となった。

 だがこれはあくまでも第1ラウンドに過ぎず、じつはすでに第2ラウンドの幕が開いている。

 それが700MHz帯を巡る審査だ。今回、ソフトバンクが獲得したのは900MHzで、もう一つのプラチナバンドなのだ。4月以降に応募を受けつけ、夏ごろには割り当てが決まる予定である。

 しかし、これがどうもソフトバンク以外の通信3社(NTTドコモ、KDDI、イー・アクセス)で決まりそうなのだ。