2010年、民主党が実施した事業仕分けによって、東京・お台場にあるエリート外国人留学生寮の廃館がひっそりと決定した。政府は新成長戦略の中で「留学生30万人計画」を掲げておきながら、この3月までに国費留学生などの外国人を国営寮から追い出すという、矛盾した愚行に出ようとしている。

「運営は大学に任せるべき」と民主党が言い放った東京国際交流館。入居者が所属する28大学に問い合わせると、「大学単独では限界があり、国のサポートあってこそ」との意見が殺到した
Photo by Toshiaki Usami

 東京都江東区お台場。東京湾に面した閑静な埋立地に、4棟から成るガラス張りの近代的な建物が鎮座している。文部科学省所管の独立行政法人、日本学生支援機構(JASSO)が運営する留学生寮「東京国際交流館」だ。

 2010年12月、JASSOから届いた一通の通知が、関係者に大きな衝撃を与えた。

「12年3月末をもって、この施設は廃館となります」

 ここに住んでいるのは、主に東京大学や政策研究大学院大学、早稲田大学など国内の一流大学に国費で留学しているアジア・中東諸国の政治家候補や官僚、あるいは日本の優良企業に就職するエリートばかり。01年の設立以降、約5200人ものOB・OGネットワークが世界70ヵ国以上に広がり、多くの各国政府高官やグローバル人材を輩出してきた。

 高度人材の獲得競争が世界で激化する中、世界中の優秀な大学院生や研究者に質の高い生活や交流の場を提供すべく、国策の一環として政府が設立した経緯があり、欧米諸国にも引けを取らない国内随一の留学生受け入れ施設だ。

 それほどの重要施設にもかかわらず、民主党は事業仕分けにおいて「国でやる必要はない」と判断、ひっそりと売却が決まったのだが、その後も買い手が付かず廃館となり、900人もの全入居者に3月までの退去を命じたのだ。

「日本の国際化を推進するためにも、この施設が必要です」

 あわてたのは、危機感を持った世界中の“知日派”OB・OGたち。こうした存続を望む署名が続々と集まり、さらには現在の入居者らも知恵を絞って、施設の“増収策”までつくり上げた。