煙草の煙をくゆらせながら、一杯のコーヒーが楽しめる、昔ながらの「純喫茶」…。全盛期には文化人が集まるサロンや待ち合わせ場所として利用されていたが、時代の波に押されて年々その数は減少しつつある。そんななか、純喫茶に心を掴まれた女性たちがこぞって純喫茶を訪れているという。(清談社 真島加代)
喫茶店にとけこむ
“純喫茶を楽しむ女性”の特徴とは
平成が終わりに近づくなか、今も「昭和の空気」をまとっている空間といえば「純喫茶」だ。手描きのメニューや年季の入った壁、全席喫煙の店など、中高年の男性にとっては居心地のよい場所というイメージが強い。しかし近年、そんな昔ながらの純喫茶が若い女性の間で密かなブームになっているという。
「最近、お店の常連客に混ざって、コーヒーを飲んだり、本を読んだりしている20~30代の女性の姿をよく見かけます。私が純喫茶巡りをはじめた十数年前には、あまり見られなかった現象ですね」
そう話すのは、『純喫茶、あの味』(イースト・プレス)の著者で、東京喫茶店研究所2代目所長を務める難波里奈さん。難波さんは十数年前から趣味で純喫茶を巡りはじめ、現在までに全国1700軒以上の喫茶店に足を運んでいる。そんな難波さんから見ても、近年の客層の変化は明らかだという。
「以前は、スーツを着たサラリーマンや地元のおじいちゃんなど、主な客層は男性でした。当時は、少し地方の喫茶店に私が1人で入店すると『どうしたの?何か用事?』とマスターに訊ねられるほど、女性客は珍しい存在だったんです。でも最近は、女性客が増えてきたことをお店側も感じているらしく、1人で訪れてもマスターに驚かれることはなくなりましたね」
難波さんが純喫茶の情報を投稿しているTwitterのアカウント「純喫茶コレクション」のフォロワーや、彼女が主催する純喫茶イベントの参加者も圧倒的に女性が多いという。それだけ、純喫茶を楽しむ女性が存在感を増しているということだろう。
「純喫茶好きな20~30代前後の女性は、1人で店内にいることを苦にせず、その空間にスッと馴染んで、空気のように過ごすのがお好きな方が多いように思います。また、本を読むなど、ゆったりと過ごすのが好きな半面、お店のマスターやマダム、常連さんとのおしゃべりも楽しめるといった、穏やかな人が多い印象ですね」
純喫茶という空間に溶け込む女性たち。彼女たちは、純喫茶のどのような点に惹かれているのだろうか。